11 特訓 ページ16
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『ふっ、はっ!やぁっ!』
数キロの重さの呪具で確実に急所を狙う。衣ずれと、足音、空気を切る音。絶対に逃がしはしないと相手を捉える。相手の十二単の裾が翻り、そこかと次に狙った場所には誰もいなくてただ何もいない場所に重たい呪具を振り回した私は反動で足場を悪くして床に尻餅をついた。
『痛ッ……』
「小娘よ。ぱんけえき、頼むぞ」
『……私も食べたことないのに』
「お主はその気になればすぐにでも食べられるじゃろ」
両手をついて座り込んでしまうと空中でふよふよと浮いている私の術式である夜叉が余裕の笑みで顔を覗き込んできた。
白髪で赤い目。頬には切り傷があり額には柳原家の家紋が刻まれている。緩めの下げ髪の赤い紐には鈴がついており彼女が現れると鈴の音が微かに鳴るのだ。
こうして休みの日にはよく夜叉を使って訓練をしているのだけど、いつもその見返りとして何か簡単な願いを一つ叶えると約束している。しかし彼女は大抵【契約中】には到底叶えられないような要求をしてくる。
温水プールに行きたいと言われても夜叉は濡れもしないし温度も感じない。採点付きカラオケに行きたいと言われてもカラオケマイクに声が反応しなかったり、中でも1番多い要望は現代の食べ物に関心を示す事だが、飲み食いはできない。
ここ最近で実現できた要求は悟くんと3人でホラー映画を見ることだけだった。
『……琉紗丸。私、高専入ってちょっとでも強くなれたかな』
「まぁ、受け身ばかり取っていた時よりかは成長したんじゃないかの。あの時はぴーぴーと泣きおって」
『もう6、7年くらい前の話だよね……それ』
「6、7年。ほほ。わてにとっては昨日の出来事じゃな」
琉紗丸は生まれた時から常に一緒にいた。夜叉には自我があるとはいえ操り主の本人の強い意志は契りを結んでいる間多少なりとも反映するものだ。つまり、これは幼少期のある出来事がきっかけであるが私の苦手とする雷は彼女も得意としないし、悟くんのことは琉紗丸も大好きである。
頑張らなきゃ、と気合が入ったところで訓練場の扉が開かれた。
「捗っているかい?」
『夏油先輩!お疲れ様です』
「いいよ座ったままで。休憩中?」
『はい。夏油先輩は……』
「近くを通りかかったらAの声が聞こえたからね、覗いてみようと思ったらなかなか面白いものを相手にしてると思って」
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真理亜 - 夢主と誕生日一緒なんだか!好きぴと誕生日一緒💕 (1月22日 19時) (レス) @page5 id: 2ba0617eeb (このIDを非表示/違反報告)
エンドラーク(プロフ) - めちゃくちゃ好きです!!パスワード保護されてる小説はもう見れないのでしょうか….. (2022年8月22日 1時) (レス) id: 716a03fe49 (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - がんばってください、陰ながら見守ってます(*´˘`*) (2021年3月22日 18時) (レス) id: 2bbd9ff8c5 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - 美波さん» ありがとうございます!頑張ります! (2021年3月20日 9時) (レス) id: ef0eaf48d3 (このIDを非表示/違反報告)
美波(プロフ) - めちゃくちゃ好きです...(;_;) 更新頑張ってください!! (2021年3月19日 8時) (レス) id: 1b90c873e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2021年3月13日 22時