愛吐 40 ページ49
敦と芥川は無事に組合の長を倒し、横浜を危機から救った。
鏡花も同じだった。自分に克ち、横浜を守った。
…それも、彼女が望む光の世界に相応しい高潔さで。
説得したAにとって、一か八かの賭けだった。
無我夢中に語った事が、鏡花の心を動かした。
鏡花は異能を操り、無人機と白鯨の衝突寸前に脱出に成功した。
ヨコハマの誰もが望む形に終わった。
こうして______横浜を巻き込んだ広大な異能力戦争は幕を閉じた。
_________
…我々の勝利だった。夕日を美しく反射する海に見入っていた。静かにも心地よい波の音が耳に溶け込むように入る。
嗚呼、この街を守ることが出来て.......本当に良かった。
「綺麗だね」
ふわりと砂色の外套が視界の端で揺れた。嬉しくて薄く目を細めて微笑んだ。
『はい』
私達の間にはそれだけしか会話がなかった。
私は、ポートマフィアを守る事ができただろうか。最善を尽くせただろうか。
そう考えたけど、今はそんな事どうでも良いくらいに満足感を得ていた。
暫くの間彼と並んで美しい景色に引き込まれていると不意に彼と肩が擦れあった。
反射的にそちらを向くと鷲色の瞳の奥と目が合った。
余りにも美しかったものだからそのまま引き込まれていると彼の顔が近づいてきた。否、違う。
私も近づいていた。薄らと目を閉じる。
時が止まった様に、時間が長く感じた。漸く彼の香りがふわりと漂ったその時、私のポケットに入った携帯が騒音を立てたのだ。
その音で我に返った私は彼から目を逸らして電話に出た。
『ッ、もしもし!はい.......はい、わかりました。すぐ向かいます』
ピ、と電話を切ると太宰さんと目を合わせるのが猛烈に恥ずかしくて何も云えないでいた。
「幹部補佐は忙しいねぇ」
『.......はい』
「私もそろそろ戻るとするよ」
身体の熱を覚ますかのように、瞳を閉じた。
"太宰さん。愛していました"
あの肌に吸い付いていた気持ち悪い髪や服の感触。手や体は冷たかったけど、じんわりと熱くなった心。
______もう、二度と交わることがないと察して気持ちを隠したこと______
(四年前のあの言葉を撤回できるのはいつになる事やら)
そうして私は彼に背を向けた。
少し振り向いてまた、と手を振ると向こうも笑顔で手を振った。お互いに違う方向へと歩いて行った。
暖かな日差しがキラキラと海に沈み、これからヨコハマは深い夜闇に覆われようとしていた。
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時