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銃傷 ページ10

十二月十八日。

平助も起き上がれるようになり夜の警備に撤していられるようになっていた頃。


私はその晩、総司や土方さんに疲れていることを危惧され早めに床に就くように言われ、自室で休み始めたとたん泥のように眠ってしまっていた。

そんな私を起こしに来るものなど平常時には誰もいないが、今夜は違った。


御所内が異様に騒がしい事に薄ぼんやりと意識を取り戻したが、疲労のせいかまた瞼(まぶた)が眠りの世界へと意識を引きずり込もうとした。

だがそれは、源さんの己を呼ぶ焦ったような声と足音で一気に霧散する。


「A!!すまないが起きてくれ――――勇さんがっ!!」


その声には特に答えずに襦袢のままお気に入りの簪を手に障子を開けると、源さんは私の格好など目に入らないかのように腕を引っ張った。


連れて来られた治療室には幹部隊士や、今日近藤さんが二条城へ行く時に連れて行った護衛の隊士たちが横たわる近藤さんを囲むように立ち尽くしていた。

私は隊士たちの壁を割って近藤さんのところに行くと、右肩に銃傷が確認され、その出血量や傷の大きさから普通に止血するのは難しいと判断した。

急いで髪を纏め上げてたすき掛けをして準備を始める。


「とりあえず皆近藤さんから離れて!邪魔!―――山崎君、焼き鏝(やきごて)の用意をお願い」

「っ、はい!!」

「こん、ど、さん?」


頭上から声が聞こえたかと思えば、そこには呆然とした顔で苦渋に歪む近藤さんとその傷跡を交互に見つめる総司の姿があった。

私が下がれという意味で着物を少し引っ張ると、総司はその視線を今度は背後にいた土方さんに向け、掴みかかり「なぜもっと護衛を増やさなかったのだ」と責め始める。

他の幹部たちは土方さんのせいじゃないだろと総司をなだめようとするが、完全に頭に血が上った彼にそんな言葉は届かない。


見ていられなくなった私は千鶴に傷口の圧迫を頼むと、大股数歩で総司に近づき鬼の力で土方さんから無理矢理引き剥がすと彼の頬を張った。

総司はパンッと乾いた音が響いたと同時に、動力を失ったからくりのように重力に抵抗無くストンとその場に座り込んだ。

焼き鏝→←伏見奉行所



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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時

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