離隊 ページ47
話が落ち着いたところで隣に立っていた総司が土方さんに向かってゆっくりを歩を進めた。
その顔は何か決心を固めたような真剣な顔で、なんとなくだが総司のせんとすることが見えた私も共に歩を進める。
その場にいた一を除く全員が私たちの存在に気が付いていなかったようで、一様に驚いたような、どこか心配の滲んだ表情を浮かべていた。
「・・・近藤さんが死んだっていうのは、本当の話なんですよね?」
「―――ああ」
「あなたはどうせ、自分のせいであの人を死なせてしまったと、なぜ助けられなかったのかと、そうやって自分を責めているんでしょうね」
総司の声はとても落ち着いた声だった。
いつもの物腰の柔らかさとは比べ物にならないほどに優しく、相手の心に良く響きわたるような透き通った声だ。
「僕は今まで近藤さんのために、新選組の剣として刀を振るってきたつもりです。・・・でもその近藤さんがもういないんじゃ、僕がここにいる意味はなんですか?」
「・・・」
表情もとても穏やかで、まるで―――死を目前とした人のようだ。
「土方さん。僕は―――」
「――総司」
無意識のうちに握っていた手に力をこめて「一人じゃないでしょ」という意味をこめて名を呼ぶと、総司はとても嬉しそうに微笑んだ。
「うん、そうだね。土方さん、"僕ら"二人は―――新選組を抜けます」
「・・・」
場の空気が止まる。
皆驚いているようだが、土方さんはまるでそうなると知っていたかのように息を一つ吐くと「本気なんだな」と念を押すように聞いた。
その問いに二人で頷くと、土方さんは何も言わずに背を向けて歩き出した。
・・・これが、あの人なりの見送り方なのかもしれない。
その背が見えなくなると、私たちを見つめる三人の方を向く。
もう二度とこの顔を見る事は叶わないかもしれないのだから、最後に目に焼き付けておこうとするが、千鶴の優しい笑顔も、平助の元気な笑顔も、一のやわらかい笑みも、そこには存在しない。
あるのは皆の寂しさの滲む顔だった。・・・だが、それはこちらとて同じ事。
「・・じゃあ、僕らそういう事だから」
「皆、元気でね」
「・・・ああ、こちらの事は気にするな。達者で暮らせ」
「一君も、千鶴ちゃんと幸せにね」
「平助もちゃんと自分の道を進んで、悔いのない人生を歩まないと駄目だよ」
「ああ、わかってるよ」
千鶴は声がうまく出せないようで、私たちはそれに言葉ではなく微笑みを返すと陣を後にした。
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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時