特別な人たち ページ29
走っても走ってもなかなか近藤さんたちの姿が見つからない事に、私は若干焦りを感じてきていた。もしや、もっと前の段階で襲われて足止めを食らっているのではないか。・・・死んでしまったのではないか、と。
不安に押されてとまりそうになる足に叱咤(しった)してさらに進むと、遠くの方から剣同士がぶつかり合う音が聴こえてきた。
少ししてその場所に到着すると、総司と一が刀を構え、二人の背に守られるように近藤さんと千鶴がいた。
対峙しているのは―――たくさんの羅刹と、洋装を身にまとった南雲薫だった。
「沖田、そろそろ限界じゃないのか?いくらお前が強くたって所詮は人間。・・・腕力じゃ俺たちには勝てないし疲れるのだって早いんだ。無理はしないほうが良いんじゃないか?」
「うるさいよ。・・・ちゃんと生きて守りきるって約束しちゃったからね。千鶴ちゃんには悪いけど、君にはさっさと死んでもらわないと」
薫君と剣を交えながら総司はたびたび背後に回ろうとする羅刹たちを切り捨てていく。
一件その立ち姿は余裕そうに見えるが、肩は激しく上下し口からはぜえぜえと苦しげな息を吐いている。一も、総司ほど疲労はしていないが肩で息をしている。・・敵が多すぎるのだ。
もう見ていられなくなり木々の陰から抜け出そうとした私の肩を、何者かによって掴まれた。
「行くな、A」
「っ!!?―――千景!どうして止めるの?」
「あいつらが死ねばお前を縛るものも虐げるものもなくなる。・・・今からでも共に鬼の里に来い」
「冗談じゃない。私たちを虐げたのは貴方たち鬼だって同じ。
・・・あの人たちは、私が鬼と知っても一度も私の事を軽蔑(けいべつ)しなかった。こんな私を"仲間"だって受け入れてくれた。だから、私はあの人たちと―――総司と共に生きる!」
「A・・・」
千景の手を無理矢理払うと私は皆のいる場所へと走り出した。
総司に斬りかかろうとする羅刹のうち一体を抜き打ちできると、疲労した総司を背に庇うように彼の前に立った。
余裕の笑みを浮かべていた薫は表情を強張らせた。
「天野・・どうしてお前がここに」
「A・・・待ちくたびれたよ」
「待っててくれたんだ。―――お待たせ」
周りを羅刹たちが囲み、明らかに劣勢な状況な事には変わりない。・・・でも、今はなんだか負ける気がしなかった。
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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時