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説得 ページ26

土方さんが江戸へと発って数刻もしないうちに私たちは敵軍―――新政府軍―――に完全に包囲され、にらみ合いを続けていたが、入隊して間もない旧幕府側の一人の兵士が発砲した事によって戦闘が開始された。



―――そろそろ退き時だな。
向かって来た多くの敵の内二十人くらいを斬って、私はこの戦いの無意味さを感じた。

これだけの敵を斬ったのに、打ち込まれて来る大砲や銃の音が途切れる事も、衰える事もない。
こちらに斬り込んで来る敵の数は変わらないのに、それを受ける味方の数は減る一方だ。

陣が置かれている丘を駆け上り、私は近藤さんの所へと向かった。


そこには、各場所で指揮を執っていた新選組の幹部たちが集まっていた。
・・・やはり皆、考える事は同じなのだ。


「近藤さん、私の方も敵が突破しかけています」

「近藤さん、撤退命令を出してくれ!戦力が違いすぎる!・・勝てっこねえ」

「―――馬鹿者!敵を前にして怖気付いたか!貴様、それでも男か!」

「近藤さん・・・」


言われた左之も、その場の幹部たちも近藤さんの言葉に唖然とした。

こんな無茶をするような人でも、まして仲間を犬死にさせるような人でもなかったはずだ。
・・・なのに近藤さんは、この戦況を見てもこれ以上死人を出そうと言うのか。

事の成り行きを静かに見守っていた総司は、私の肩に手を置いた。
まるでなだめるかのように優しい触れ方に諭されて初めて、私は刀の柄を強く握り締めていた事に気づいた。手のひらにはわずかに血がついていて、それほどまでに強く握っていたらしい。

総司は、近藤さんに向けるものとは思えないほど厳しい視線を向けていた。
彼にそうさせてしまうほどに、今の近藤さんに以前の彼の面影は微塵もなかったのだ。


「局長。四方を敵に囲まれている今、撤退をしなければ全滅です」

「斎藤の言うとおりだ。・・近藤さん、撤退は負けじゃねえ」

「近藤さん―――頼む、これ以上部下を無駄死にさせないでくれ」


近藤さんの説得は幹部たちに任せてもよさそうだと判断した私は、その場から陣の内側へと入ると机上に地図を広げて脱出のための経路を練った。

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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時

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