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払拭 ページ24

甲府城に先行させた島田君が焦った様に帰ってきたのは、その日の夜だった。

仮眠を取っていた私と総司は一と千鶴によって叩き起こされ、眠気を押し込みながら土方さんのところへと向かった。


「・・・甲府城が敵の手に堕ちた。今から陣を移す」

「日野で休んだの、まずかったんでしょうね」

「今さら言っても仕方がねえ。・・A、総司は陣を移す場所に先行しろ。そこで何かあれば伝えてくれ」

「わかりました」






「・・・ねえ、どう思う?」

「どうって?」


総司と陣を移す候補地である街道沿いを見回っていると、突拍子も無く質問をされた。
・・・一体何の事だろうか。敵はいないと思うけど。


「今回の戦だよ。・・・負け戦なら、僕はあまりやりたくないなって思ったんだ。君は?」

「私も、あまりやりたくはないな。・・・べつに勝ち目のない戦をしたくないとかじゃなくて、負け戦ならお互い死ぬ可能性が高そうだから、ちょっとそれが怖い」

「僕も同じだよ。Aに死んで欲しくないし、君を残して死にたくない。
・・・でも、近藤さんのために生きるって決めちゃったからね」

「・・そうだね」


私たちは、無意識に手を繋いでいた事に気がついた。
でも、気がついたからといってその手を離す事はせず、より手に力を込めて相手を繋ぎとめようとした。

総司は少し困ったように笑うと、空いている手で私を自分の胸元に引き寄せて抱きしめた。


「僕は―――Aを守る。絶対に、ね」

「私だってただ守られてるだけじゃなく、総司の支えになってみせるよ」

「・・あーもう、本当に好きだなあ!」


照れ隠しでもしているのか、総司はさらに強く私を抱きしめた。
頭が彼の胸に強く押し付けられているせいで、早い鼓動の音がより鮮明に聴こえる。

総司がいつもこうして抱きしめて「守る」と言うのは、彼自身の不安を払拭(ふっしょく)しようとしているのではないかと感じる。

それをけっして口には出さないあたり、総司らしい。

別人→←浮つき



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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時

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