【薄桜鬼】沖田総司とは私の弟分です！陸 (ページ16)

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江戸に着いてからは主に上様の警護や周辺地域の警備を任されていた新選組だったが、二月下旬にその名を"甲陽鎮撫隊"と称して近々出陣する事となった。

その頃には、まだ傷跡は残るものの無事に復帰を果たしていた近藤さんは、先日幕府に大名として取り立てられたことを皆に公表し、とても喜んでいた。

でも、その事を喜んでいたのは近藤さんと、その姿を見て嬉しそうにする総司だけであった。

今の力も権威もない幕府に取り立てられたところで、何の意味も持たない事は皆わかっていたから、そんな皆には、近藤さんが目先の幸福にしがみついているように見えたのだ。

そのせいで幹部内にも不満が溜まりつつあるのに、近藤さんは気づく事もなかった。

出陣が決定してからというもの、土方さんの行動は早かった。

二日後には、隊士全員に洋装をさせる準備が整っていたのだ。
どうしても嫌だという者には強要せず、ただし、その者には銃器の類は一切触らせなかった。

「髪、切らないと邪魔かな・・・」

「え、A？まさか僕たちみたいに切るつもりじゃないよね？」

「総司も番が回ってきたら髷(まげ)を切るんでしょ？」

「いや、そうだけど・・」

「・・・A、これは副長命令だ。髪は絶対に切るな」

「・・はーい」

渡された洋装に袖を通す前に、幹部の皆は長かった髪を切る事になった。
切る必要のなかった新八は早速着替えているし、左之は肩の上辺りまでバッサリと切って、今は釦(ぼたん)に苦戦をしながらも着々と着替えている。

じゃあ簪はやめて上にくくるか、と決めて退室しようとした私を、たった今髪を切り終えた平助が呼び止めた。散髪室と化した部屋に、一が入っていくのが見えた。

「なあなあ、Aが外国にいた時って洋装とか着てたのか？」

「あー、そうだね。結構向こうの国の服着てたよ」

「じゃあこの釦(ぼたん)ってのも慣れてんのか！なんだか格好いいな！」

「平助たちだって、着てれば慣れるでしょ。・・・じゃ、私も着替えてくるね」

「おう！」

外国の経験のおかげで難なく着る事はできたが、"スカーフ"は窮屈だから前から苦手なのだ。
用意されてはいたが、そこらへんに放ってシャツの一番上の釦(ぼたん)も外した。

ちょっと女にしてはアレだが、一個くらいなら問題ないと判断して皆のいる部屋へと向かった。