斬る約束 ページ13
近藤さんの治療は基本大坂城にいる医者が担当する事になり、私たちは護衛役とは名ばかりで暇人と化してしまった。
夜になって部屋に案内された私たちは近藤さんの治療のための部屋とは別に、なぜか二人で一部屋しか貰えず困っていた。いや、むしろ一人は喜んでいた。
「・・・まあ、布団は二組あるからいいけどね」
「僕は一組でも一向に構わなかったんだけどね」
「構うわ!」
「えー?だって、Aは僕と一緒に寝るの嫌じゃないって前に言ってたじゃない」
「わ、忘れた・・」
「嘘はよくないと思うなー。そんな悪い子にはお仕置きしないとね?」
大坂城に着いてからすっかりいつも通りになった総司は、今も私をからかってはニヤニヤと愉しそうに笑っている。
"お仕置き"と言って彼がとった行動は、一組の布団に私を引きずり込んで強く抱きしめて離さないというものだった。
・・・つまり、一緒に寝ろということだろうか。
「じゃ、おやすみー」
「ちょっと!これじゃ二組ある意味ないじゃない!」
「いいからいいから」
「・・・はー、もう、わかったよ」
諦めて体から力を抜くと、総司が驚いたような声を上げて腕の力を緩めた。
その隙に腕から逃げ出す事も考えたが、この温もりは冬の寒さに凍える私には心地いいから、そのまま居座る。
「A、何か変なものでも食べた?」
「失礼な人だね。好きな人の腕の中にいたいって思うことって、そんなに変?」
「いや、だって、あんなに嫌がってたのに・・」
「総司は私より体温が高いから、湯たんぽになるしね」
「湯たんぽって・・・あ、去年も同じやり取りした気がする」
「大晦日の時ね。そういえば、ちょうど一年前か・・」
今年はあまりにもお互い会えなさ過ぎて、急にその間の寂しさがこみ上げてきた。
総司も同じ心持ちなのか、私を抱きしめる腕に少し力がこもっている。
「A、もし僕から離れて行こうとするのなら、君を斬ってでも止めるから」
「じゃあ私も、総司が私の手を離そうとしたら―――あなたを斬って私も死ぬ」
「物騒だなあ」
「総司も人の事言えないでしょ」
「ははは、たしかにね。・・・その"自分も死ぬ"って約束、僕もつけるよ。
一人じゃ、寂しいかもしれないしね?」
「案外、私は一人の方がいいかも」
「そんな事言ってると―――斬っちゃうよ?」
私たちは物騒な台詞の中に"絶対に離さない"という意味を滲ませて言い合い、どちらからともなく静かに眠りについた。
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まんさ(プロフ) - justforyou7nanaさん» コメント、リクエストありがとうございます! 番外いいですね!作ってみたいと思います!(*'ω'*) さすがに18禁は制限がかかるので無理ですけどね笑 (2017年4月1日 10時) (レス) id: 9f423a56ec (このIDを非表示/違反報告)
justforyou7nana(プロフ) - この小説の番外編も見てみたいです!18 禁もみてみたいな笑 (2017年3月30日 8時) (レス) id: 4203d4d0a3 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 弓 桜さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
弓 桜(プロフ) - まんささん» 見に行きます♪ (2016年3月10日 20時) (レス) id: 484d75b51c (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 詩音舞さん» ありがとうございます! (2016年3月10日 19時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2015年8月4日 22時