笑顔 ページ29
「では、ごゆっくりどうぞ」
土方さんと親方さんの二人にお茶を出すと私は広間へと向かった。
・・・無論、昼餉をとるため。
いつも通りの騒々しい昼餉をすませてから、木刀を取りに行き壬生寺へと向かう。
境内には私一人かと思えば、そこにはすでに黒ずくめの先客が素振りをしていた。
「―――む、Aか」
「あら？一番乗りだと思ってたのに。・・・一はいつからいたの？」
「来たのは先ほどだ」
「ふーん・・・一緒に素振りしてもいい？」
「・・・境内は俺だけの場ではない」
「んじゃ、遠慮なく」
そこからは、交わされる言葉は一切なく、ただ木刀が風を切る音と振る者の息使いしか響かなくなった。
私たち二人からわずかに発せられる殺気に逃げたのか、はたまたただの集中のし過ぎなのか、この時期には聞こえてくるはずの蝉たちの鳴き声は聞こえてこない。
しばらく振るうちに、なんだか悩んでいた事がどうでもよいものに感じるようになってきた。
ただ現実から逃避しているわけではなく、悩むまでの事でもなかったようだった。
「・・・なにかいい事でもあったのか？」
「―――え？」
「ここに来た時と比べ、随分と晴れた顔をしている」
「・・・まあ、なんとなく私の意思は固まったかもね」
「そうか。―――よかったな」
「あれ、一今笑った？」
「・・・なんの事だ」
慌てたように襟巻きで顔を隠すが、照れているのかなんなのか、耳まで真っ赤だ。
「いいじゃない笑ったって！いいと思うよ？」
「だからなんの事だと聞いている」
なんだかものすごく照れてしまった一と、その日は素振りや試合を重ねた。
・・・やはり、総司の言っていた通り強いもので、中でも彼の居合は達人級だ。
今まで一の笑顔は見てこなかったから、「まったく笑わないわけじゃないんだ」と新しい彼を認識できた一日だった。
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薄夜 - うん。面白いね。再新、頑張って (2014年10月10日 19時) (
レス) id: 3978161a67 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも更新頑張ってください♪(*^_^*) (2014年10月5日 23時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 練蓮さん» ありがとうございます(*^-^*)精一杯頑張らせていただきます！ (2014年10月5日 22時) (レス) id: 2db9cb813e (このIDを非表示/違反報告)
練蓮(プロフ) - 続編おめでとうございます！更新楽しみに待ってます(*^◯^*)頑張って下さい!!! (2014年10月5日 17時) (レス) id: ddc6e25d6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まんさ | 作成日時：2014年10月5日 14時
