鬼ごっこ ページ22
ある日の昼過ぎのこと。
昼食を食べ終え、壬生寺で稽古でもしようと木刀を持ってきたが相手もいないし、長い食休みでもとろうと境内にある階段の手頃な高さに座っていた。
ぼーっとしていたら一人の子供がつまらなそうな顔をしてやって来るのが見えた。
―――たしか、いつも総司と遊んでいる子供のうちの一人じゃなかったかな?
視線を送っていると、近づくにつれて人がいることに感づいたのか下に向けていた顔を上げる。
目が合ったから微笑んで見せると、危険な者ではないとわかってくれたのか、その子はとことこと歩み寄ってきた。
「おねーさん、浪士組の人?」
「そうだよ。よくわかったね」
「そばに木刀置いてあるから・・・稽古するの?」
―――今時の子供はずいぶんと鋭いな。
木刀が傍にある、浪士組の屯所に近い広い場所にいる・・・つまり浪士組の人間。
そういうことなのか・・・。
「いやー、そうしたいのは山々なんだけどねー・・・。相手がいないんだ」
「お、おいらは無理だよ・・?」
「ふふっ、わかってるよ・・・そうだ、君はどうしてここに?
いつもは総司と遊んでいるでしょ?」
「・・・うん。でも総司、今日は具合悪いから無理だって」
「具合が悪い・・・?」
さっきお昼を食べた時はそうは見えなかったけど。
―――仮病?
まあ、今は一人でいたいって気持ちはわかるし、そっとしておくかな。
急に黙り込んだ私を心配でもしているのか、不安げな眼差しを向ける彼に微笑むと
「じゃあ私と一緒に遊んでくれない?」
「うん、いいよ!なにする?・・・剣術じゃなければいいよ」
「そうだな・・・総司といつもしてる遊びは?」
「鬼ごっこと、たかいたかいしてる!」
たかいたかい・・・懐かしいね。
私も小さい頃はよく父様にしてもらって、楽しかったな。
立ち上がると、寺の裏手へと足を向ける。
子供も笑顔でついてきてくれた。
「よし、まずは鬼ごっこしようか!」
「うん!鬼はおねーさんからにしてもいい?」
「いいよ・・・じゃあ十数えるから早く隠れなよ」
「はーい!」
タッタッと駆けて行く音を聞きながら「一、二・・・」とできるだけゆっくりめに数え始める。
十数えると、歩き出したのはいいが、すぐ近場で子供を発見した。
・・・すぐ捕まえちゃ遊びにならないか。
少し遠めの位置で彼にも聞こえる声を出す。
「みーっけ!」
「わわっ、にげろー!」
―――まだまだあぞびは始まったばかりだ。
128人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「沖田総司」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
薄夜 - うん。面白いね。再新、頑張って (2014年10月10日 19時) (レス) id: 3978161a67 (このIDを非表示/違反報告)
クルエル(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも更新頑張ってください♪(*^_^*) (2014年10月5日 23時) (携帯から) (レス) id: 3cb9714877 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 練蓮さん» ありがとうございます(*^-^*)精一杯頑張らせていただきます! (2014年10月5日 22時) (レス) id: 2db9cb813e (このIDを非表示/違反報告)
練蓮(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新楽しみに待ってます(*^◯^*)頑張って下さい!!! (2014年10月5日 17時) (レス) id: ddc6e25d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まんさ | 作成日時:2014年10月5日 14時