遠い記憶 ページ6
試衛館―――
たくさんのセミの鳴き声が響く天然理心流道場"試衛館"では、
今日もセミにも負けぬ威勢のいい掛け声が響いていた。
カンッガッガカンッ
「やあっ」「はっああっ」
門下生たちの動きは皆とてもよく、教える師の質の良さがうかがえる。
彼らは掛け声とともに力の限り木刀を振るっていく。
その中でも特に秀でた才を持ち合わせた子供が二人いた。
一人は長い黒髪を高く結い、緋色の切れ長な瞳を持った少女。
一人は癖のある茶髪を高く結い、翡翠のような綺麗な瞳が印象的な少年。
門下生は大人ばかりの道場の中で子供は二人だけである。
年は少年が10くらい、少女のほうは12、13くらいだろうか。
少女のはやけに大人びた雰囲気をしているせいで、年がもう少し上にも見える。
「はあっ・・・っは」
「ふうっ・・・そろそろ休む?」
「いえ、僕はもっと強くなって、絶対にAさんを超えるんです!」
少年はそう言って少女に好戦的な笑みを向けた。
大の大人でも背筋が凍りそうなほど不気味さを帯びたその笑みを、少女はむしろ嬉しそうな顔で受け止めて
「さすが宗次郎!大人になるのが楽しみだ!」
満面の笑みで"宗次郎"と呼んだ少年の頭をかき回すように撫でた。
「止めてください・・・」と口では拒絶しているが、反対に表情はどこか嬉しそうで、照れたような顔をしていた。
そんな彼らを見つめる周りの門下生たちの目は嫉妬、憎悪の念に満ちていたが、二人はそんなものを気にもとめていなかった。
二人はとても大きな、強い絆で結ばれていたのだ―――。
――――――でも、この世界は二人を引き裂いた。
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まんさ(プロフ) - MMさん» 面白いなんて、とても嬉しいです! (2016年3月10日 21時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
MM(プロフ) - どっちも面白すぎて、ヤバイです(^O^) (2016年3月6日 23時) (レス) id: db2d6bf4c4 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - MMさん» こちらも見に来ていただけるとは!ありがとうございます! (2016年3月6日 23時) (レス) id: ab7e40fe20 (このIDを非表示/違反報告)
MM(プロフ) - 沖田かっこいい(#^.^#)小説めっちゃ面白い! (2016年3月6日 23時) (レス) id: db2d6bf4c4 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - はるかさん» ご指摘ありがとうございます!本編では"総司"のままだった気がしたのでそのままにしたのですが・・・。一応直しておきます!これからもこの小説を温かい目で読んでやってください(´ω`) (2015年3月25日 7時) (レス) id: 647a4018e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まんさ | 作成日時:2014年8月14日 22時