だけどこんなに君が好き《part.3》【ARS N】 (ページ5)

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97.直球ストレート一本勝負でいかがでしょう。ページ5

それは恋だとかなんだとか、名前をつけることを考えもしなかったあの時ですら

二宮の手を振って消えていく後ろ姿を見ながら、

居なくなってしまうことを実感して初めて
涙が止まらなくなった。

それを知っているのは
潤くん、ただひとりで

私自身もずっと蓋をしていた事実。

和「ばいばーーーい」

うーんと身体を伸ばして大きく手を振る二宮の隣に、

静かに腰を下ろして、空を見上げた。

それは本当に櫻井さんの乗った飛行機なんだろうか。

ありがとうございました。

ごめんなさい。

ありがとうございました。

笑顔が浮かんで、消える。

そしてやっと、息は整い始めた。

「言いたいことも聞きたいことも死ぬほどあるんだけど」

和「おん？」

「とりあえず一服させて」

和「ふ(笑)」

ポケットをまさぐって二宮が手にしたのは

いつもの、緑の箱だった。

＊

ため息とともに吐き出された煙が空へと消える。

最後の煙の行き先を見届けたあと、

ゆっくりと、灰皿へと残りを押し付けた。

呼吸も気持ちも、やっといつも通り。

「………ねぇ」

和「んー」

セットもされていない髪が、風にふわんふわんと靡く。

その横顔がまた少し胸を締め付ける。

今、蓋を開けてｰｰｰｰｰ

「二宮和也さん」

改まってそう、名前を呼んだ私に

彼は少し、咥え煙草ですかしたその表情を崩した。

「好きです。付き合ってください。」

こんだけひん曲がったんだ。

軌道修正なんか出来ないならば
これから直球勝負するしかない。

……………さぁ

どう出る、二宮和也。