28 drops ページ29
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A｢それ、1つ私が持とうか…？｣
｢え？あー大丈夫！俺ちからもちなんで！｣
プルプルしてきた手首を見て、心配そうにそう聞いてきたAちゃん。
お言葉に甘えて預けてもいいのに、こんなこと1つすらかっこつけたがっている自分が少し可笑しい。
｢はー！疲れた！檜山くん、ここ1人いいよね？｣
ちょっとここで待ってて、ってAちゃんと少し離れた場所で分かれて
持った時よりも重く感じるお盆を勢いよく置いたら、スマホをいじってた檜山くんが顔を上げた。
檜山 ｢知り合い？別にいいけど｣
来るまで待っててくれたのも、味噌汁零れてんぞ、ってティッシュ出して拭いてくれるのも、相変わらず優しいっすね
｢ありがと！びっくりしないでよねー！｣
檜山 ｢は？｣
まさかAちゃんだとは思ってもみなそうだから、檜山くんの反応を思い浮かべてにやにやして
数メートル先でちょこん、と待ってくれている彼女を迎えに行った。
｢ここっす！どうぞ、Aちゃん｣
檜山 ｢…まじかよお前、｣
A｢……檜山、くん、？｣
心の中で元気よく、ごたいめーん！！なんて叫んでみれば
途端に気まずそうな顔をした2人。
いやそれはそうなんだけど、そうなって当然なんだけど
檜山くんらしくない、といえばらしくない苦い顔。
Aちゃんだってさっきまであんなにかわいく笑ってたのに、急に動揺しだすし。
なんなんだろ、
｢あれ、なんかマズかった…？｣
檜山 ｢別に。笠原そっち座りなよ、俺水取ってくるから｣
A｢あ、お邪魔します…｣
檜山くんが指さしたのはおれの隣の席で、なるべく気まずくならないようにしてくれてるんだって、
誰だろうとそういう気遣いができるところ、いつもすごく尊敬する
｢Aちゃん、檜山くんは優しいから大丈夫っすよ｣
A｢…うん、｣
ただ、Aちゃんにはそんな顔して欲しくなかっただけで。
檜山くんに対して何か悪い印象があるのなら、俺がそれを取っ払ってあげたかっただけで。
2人だけの空間なら、もっと話したいことも知りたいこともあったはずなのに、口から飛び出すのはくだらない話ばかり。
無駄に多くなる口数を自覚して、バレないようにため息をついた。
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作者名：スイ. | 作成日時：2021年10月1日 20時
