33 drops ページ34
*
「なー海琉、」
海琉「？なに？」
「海琉ってAちゃんが作ったご飯とか食べたことあんの？」
真剣に宿題をがんばっている小学生相手に、とつぜん何聞いてんだって話なんだけど。
あたりまえに
なに言ってんの。って書かれた海琉の顔が、今まで離れなかった長机から俺に向けられる。
海琉「あるよふつうに。お母さんが帰り遅いときとかよく作ってくれる」
「そうなの？！じゃあしょっちゅう食べてんじゃん！
いっしょに住んでるわけではないんだよね？」
海琉「うん。Aちゃん一人暮らしだもん。家は近いけど。」
なにそれ、普通に羨ましいんですけど！
いいな〜なんて呑気に思っていれば、じっと俺の顔を見つめていた海琉が
表情を変えることなく聞いてきた。
海琉「りゅうせいさあ、」
「ん？」
海琉「すきなの？Aちゃんのこと。」
「え、、？…あはは、！」
なにも知らないチビに言われるならまだしも、海琉はAちゃんのいとこ。
しかも家族みたいに結構一緒にいて、もはや弟みたいなもん。
そんな海琉に図星を言われてしまうと、なんだか微妙に気まずい
海琉「やっぱり。」
「ちょ、俺まだなにも言ってないですー」
海琉「じゃあすきじゃ無いの？」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさあ」
へらへらしている俺とはちがって、問題を解いていた時のまま
なんだか真剣な顔の海琉。
普段からクールめな一面はあったけど、今日はちょっとだけ…違う。
初めて会ったころの、Aちゃんみたいな瞳
海琉「Aちゃんのこと、ひとりにしないで」
「え、？…どうしたん、海琉」
海琉「りゅうせいならいいと思う」
「え、ええ？」
それだけ言って、またプリントに向き直った小さな背中。
まだまだ自分の知らない彼女が、大きすぎる気がして。
海琉の意味深な言葉を思い返しては、胸の奥がギュッとなった。
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作者名：スイ. | 作成日時：2021年10月1日 20時
