モノクロの世界に色を (ページ4)

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｢さぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい。西洋奇術博士が贈る、世紀の大マジックショーだよ！｣

運が良いことにショーは今から始まるみたいだ。
私は少し気持ちを興奮させて奇術師の方を見る。

｢ご覧頂きますこの箱、実は入れたもの全てをこの世から消してしまうという摩訶不思議な箱でございます！｣

変な奇術師が指さす箱をみる。
黒くて大きい不気味な箱だ。不思議な雰囲気を保つその箱につい目を惹かれてしまう。
私はその箱をみているとふと奇術師目があったように感じた。

｢さぁさぁ、そこのお嬢さん方！是非、私の
マジックをお手伝いください！｣

目が合ったのは気のせいではなかったらしく、奇術師は確かにこちらの方を指さしてそう言った。
少し驚き、芽依の制服のスカートの端を掴む。
ひだがとれて皺がついてしまってたら、後で謝ろう。

｢お嬢さん方のことですよ！｣

１回瞬きをした瞬間に、目の前に奇術師が目の前にきた。驚き後ろに倒れそうになると、そのまま倒れていかないように頭のところに手を回され支えられた。

｢…っ！！｣

｢ひっ！！｣

拒否権なんかない、と言ったふうに私を支えた手を私たちの前で広げるた奇術師は、芽依の手を取り歩き始めた。芽依のスカートを掴んでいた私もそのまま歩くかたちになる。

私たちは奇術師に促されるまま、ショーの舞台へ上がると箱に入るように言われた。
箱の扉を、奇術師によく似た服装の狐が口で開ける。
想像以上に広さがあったその箱は私と芽依の2人が入ってもまだ空間的には余裕があった。

だが、箱の中は扉を閉じられと真っ暗で隣に芽依がいるとわかってても不安に襲われる。

｢……芽依、いる？｣

｢うん、いるよ。｣

芽依が隣にいる。
分かっていても、簡単に不安はなくならなくて必死に光を、白を求めて手を伸ばす。

だが、その手は何も触ることが出来ずに暗闇を掴む。
真っ黒は怖くて、涙が出そうで、不安に押しつぶされそうだ。
目をギュッと閉じる。

何分かして、閉じた瞼の先に白が、灯りが見えて恐る恐る瞼を上げる。

｢＿＿＿＿＿＿＿＿っ｣

赤い月があった。
綺麗な、でも、血が滲んだような不気味な赤。

白と黒いの私の世界に久しぶりに色をつけたその月は、私の記憶に鮮明に残った。