冷静沈着な女医 Ⅶ 【コードブルー】 (ページ11)

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episode94 ページ11

緋山は名取と山口匠くんの摘出手術の見学をしていた

「臓器提供のご意志に変わりがないことを最終確認しました。では…黙祷」

大勢の医師たちが目を閉じたのを見て､自分も目を閉じた

「14時5分､執刀です」

次々と臓器が摘出されているのを見ていると､名取が呟いた

名「…なんか､凄いですね。…臓器摘出するところとか､初めて見ました。

緋山先生､こんなとこで見てるより､あっちの方に入りたいんじゃないんですか？」

私は名取に1枚の紙を見せた

名「なんですか？」

緋「たった1枚､たった6行。

心臓､西日本循環器病研究センター､10歳代女性。

肺､東北医科大学盛岡病院､40歳代男性。

肝臓､函館国際病院､10歳未満女児。

膵臓､九州医科大学病院､20歳代男性。

腎臓､和歌山市民病院､60歳代男性。

小腸､北陸医療開発センター､30歳代女性。

…匠くんの体は日本中に運ばれていく」

名「…」

緋「この6行は､匠くんが17年間生きた証。そして､この1行1行にこれから生きる6人の未来が書かれてる。

だから､私は手を抜かずにやりたいの。書類仕事を」

話終わると名取は手術室から出ていったが､声はかけず私は摘出手術を見守った。