【◇】稲実エースが惚れちゃった (ページ14)

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*成宮side*

夏大の抽選も終わりトーナメントも決定。
俺もいよいよ公式戦デビューだ。

目指すは頂点。
相手がどこだろうと関係ない。

A先輩に、いいところも見せたいしね！

いつもの練習を終え、ブルペンの整備をしていると
A先輩と横井先輩の会話が聞こえてきた。

「こんな風に一緒にマネージャーできるのもあと少しだね。」
『そんな寂しいこと言わないでください。』
「私、本当にAちゃんが入ってきてくれてよかった。」
『私も、雪先輩がいてくれてよかったです。』
「今からは毎日あっという間なんだろうなぁ...」
『勝てば、続きますから。一番引退が遅い野球部にしましょ。』
「私そのつもりで8月めちゃくちゃ予定空けてる！」
『私もです。』
「でも、夏終わったら1回くらい一緒にどこかお出かけしようね！
まぁ、私は引退したらすぐに受験勉強始めないとだけど...」
『はい、絶対行きましょうね。』

そうか...。
夏は負けたらその時点で3年生たちはすぐ引退。

分かってるつもりではいたけど、俺がもらった
背番号は、思ってる以上にもっと重たいものだ。

自主練でネットにボールを投げていると
A先輩がやってきた。

『あんまり頑張りすぎたらだめだよ。試合前は身体休めないと。
雅にも散々言われてるでしょう？』
「でもじっとしてられないんだよね～！」
『今日はもう終わり。はい、片付けてご飯食べてきな。』
「え～～～。」

俺の反抗むなしく、A先輩はテキパキと片づけを始める。

『成宮、手出して。』
「手？？」

言われた通り、俺は手のひらを上に向けて差し出す。
そこに、ころんとのせられるストラップ。
ユニフォームの形になっていて、INASHIROと背番号18の文字。

「これっ...！お守り？？」
『そう。雪先輩と前から少しずつ作ってたの。』
「すげぇ、ありがとうA先輩！」
『どういたしまして。.......来年は、さ....。』
「なに？」

珍しくA先輩が言いにくそうにもごもご言ってる。
目線も泳がせてなんだかA先輩らしくない。

『この番号が1になってること、期待、してるから...。』
「えっ....。」
『じゃ、じゃあ私渡す物渡したし、帰る！！』

A先輩は言いたいことだけ言うと颯爽と帰っていった。
頭の中で、言われたことをリピートする。

やばいっ！なんだ今の！！？
ポーカーフェイスのあのA先輩が！！！

俺は熱くなった顔を両手で隠しながら
しばらくしゃがんでうずくまっていた。