【◇】稲実エースが惚れちゃった (ページ44)

今日:3 hit、昨日:32 hit、合計:55,871 hit

42 ページ44

年は明け、今日からまた部活が始まる。
そして今日は1月5日。
成宮の誕生日。

練習前、着替える前にちょうど会ったので、
朝一でプレゼントを渡す。

『はいこれ。誕生日おめでとう。』
「ありがとうA先輩！！開けていい？」
『うん。でももう中身知ってるじゃん。』
「いいの！開けるのが楽しいから！！」

わくわくした顔でラッピングを開ける成宮。

「やっぱこのデザイン俺好み！...あれ？」

気づいてくれたかな？

「な、なななな名前が入ってる.....」
『うん、お願いしたら入れてくれるサービスあったの。
でもあの時すぐにはできないって言われてたから、
成宮には今日渡したいって言ったんだよね、実は。』

最初は＜NARUMIYA＞にしようと思ったけど
なんとなく成宮は＜MEI＞の方がいい気がして
名前を刺繍してもらった。

「うわあめっちゃ嬉しいありがとうA先輩！！」
『どういたしまして。』

成宮はその日、終日スーパーご機嫌で
みんなが何があったんだと本人に聞く前に、
成宮が聞いて聞いてと、全部話し始めるらしい。

雅はすでに3回くらい同じ話をされてげんなりしていた。

数日経つと3学期が始まり、オフシーズンももうすぐ終わりだ。

成宮の投球練習に監督と部長が見守る中
私もフォームのビデオ取りで付き合う。

崩れた投球フォームにも、だいぶ力強さが戻ってきた。
まだ本人の納得するボールは投げれていないのか
焦っているようにも見えるけど、これはいい兆候だ。

あと10球投げていいかと雅に言いながら
あと20球！！と増やして、雅が増えてんじゃねぇかと
ぼやきながらも付き合っている。

なんだかんだ、いいバッテリーだ。

後々雅に聞くと、何より変わったのは1球に対する
執着心が以前とは比べ物にならないということ。
甲子園でのあの経験は、辛い経験だったろうけど、成宮が
次のステップに行くには必要なことだったのかもしれない。

そんなある日、私はいつも通りに部活に参加していると
どこからかすごく視線を感じた。
辺りを見回すと、一人の女の子が私をじっと見ていた。

目が合った瞬間、その子はすぐにどこかへ行ってしまった。
何だったんだろう、見たことない子だったな。

大体の稲実生野球部ファンは、もう見慣れて顔を覚えている。
もしかして、この前成宮に告白したという子だろうか。

面倒くさいことが何も起きなければいいけど。