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彼からの問いかけを聞いて、くるっと後ろを振り返って、もう一度暗闇を見つめれば、いい加減戻るよ、なんてため息混じりに言われた。
「A？」
「ねえ、いつかさ、4人掛けくらいの正方形のテーブルが置けちゃうような、ウッドデッキとかがある家に住んでみたい」
「え？」
「夜はお酒飲みながら過ごせるようなさ」
そんな、理想の上でしか成り立ってない話を、ぽつぽつと話していれば、笑っているのか、呆れているのか分からないため息のようなものを吐き出した彼は、私と同じように隣に並んでくれて。
「休日はバーベキューとかしたいね」
「夏には花火もできるかも」
「子供は何人欲しい？」
「んー、2人以上」
理想の話は、将来の家族設計の話にまで派生していく。ウッドデッキでのバーベキューも花火も、2人というよりも家族でというようなイメージで、理想を話していて、お酒を飲む時間は子供が寝静まってから、というのような将来に対する憧れも入っていて。
そんな話を彼も一緒にしてくれている、という事実だけで、私の理想は話す前よりも2割くらいは満たされた気がするのだ。
「いつか。何年後か、郊外に戸建て買って、今話したこと全部何年もかけてやろ」
「ふふ、いいね」
そうやってお互いに笑い合いながら、過ごすなんでもない日の深夜2時前。あと3時間もすれば、日は上り出す状況で、未来の話をしたよね、なんて語れる日はいつ来るのだろうか。
そんな日に思いを馳せながら、ほら部屋戻るよ、なんて投げ出していた手を握られて。そろそろ彼に引かれるまま、灯りの中に戻ってみようか。
2人いた温もりをこの暗闇に残して。
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作者名：早瀬 x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月29日 15時
