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ベットから抜け出してリビングに向かった私は、両手を上にあげてぐっと伸びた。まだ上手く覚醒していないからか、なんとなく電気を付ける気にもならず、向かった先はバルコニー。
1人暮らしの部屋のバルコニーなんて広いものではないが、引っ越しをした時にウッドパネルを敷き詰めたもので、割と気に入っている。バルコニー用に置いているサンダルを履いて、柵に手をかけるように寄りかかる。
バルコニーから下を除けば、人通りのない道とたまに通る車。上を見上げれば、綺麗に月と星が見えていた。深夜に空を見上げるなんて、いつぶりだろうか。東京では星が見えない、なんて言うけれど、見上げて満足できる程度には星が見えるものだな、と思う。
「あ、いた」
ふと聞こえた声に、後ろを振り向けば、眠そうな顔をした恋人の姿。大きな欠伸をしながら、なにしてんの、なんていつもより、ゆっくりめに話しながら、こちらに数歩進めて、私の隣に並んだ。
「ごめん、起こした?」
「んー、まあ、寝て1時間も経ってなかったし」
「ごめんね、今日」
「いいよ。起きるかなって思って待ってたんだけど、俺も寝ちゃったわ」
目を覚ました時に考えたことに、彼の行動が当てはまっていて申し訳なくなる。何を思ってるか分からない表情をした彼を見上げれば、明日いつもより豪華めにお昼作ってくれたら許してあげる、なんて。考えていることが見透かされていることにも若干驚くが、今日のところは私が10割悪いので、はあい、なんて伸びた返事を返した。
「ねえ見て、星綺麗なんだよ」
「ほんとだ。綺麗に見えてんね、今日」
「でしょ?あと、月がさ」
彼を見上げて月を指差せば、少し目を見開いて、え?なんて笑われて。
「月が綺麗ですね…………?」
「ふふ」
「この言葉、絶対言わせるものじゃないけど(笑)」
月が綺麗なんだよ、なんて言おうとした時に、有名な言い回しが思い浮かんで、彼を見上げれば求めた言葉を笑いながら言ってくれた。
言わせるものじゃないなんて言われるから、言わせようとしたわけじゃないよ、なんて言えば、にやにやしてた、なんて。どうやら、私は考えることが楽しすぎて、そこまで顔に出てしまっていたらしい。
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作者名:早瀬 x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月29日 15時