あさきゆめみし / ymmt ページ14
夜が一際輝くのは太陽のおかげなんだよ、夜が夜として認識されるのは朝があるからなんだよ。
目を逸らさないでよ。
「ね、祥彰、月綺麗。」
「またベランダ出てたの。冷えるよ。」
僕は3つ年上の彼女と同棲していた。彼女と付き合って1年とちょっと、僕らは夢みたいに穏やかな生活を送っていた。
風呂あがり、彼女の姿が見当たらないと思った時は大抵空を見上げていた。今日みたいに月が見える日だけじゃない。雲におおわれ何も見えない日も雨が降っている日も。
僕が隣にいても僕のことを一度も見ない、夜に取り込まれた彼女は少し苦手だった。いつも僕の理解できないことを1人でペラペラと喋るから。
「さむい、」
「ほら言ったじゃん。ね、部屋戻ろ。」
「ん、先戻ってて。」
「...うん、分かったよ。」
こんな夜には1人でいたい気分なの。それが彼女の口癖。僕には夜の美しさが理解できなかった。お店は居酒屋くらいしか開いていないし遊びに行こうにもどこも大人の世界。僕もそれなりの大人だけれどそういったものに興味が持てなかった。
夜は夜だ。僕の中の認識。なぜ小説家や作詞家は夜に意味を持たせるのが好きなのか。僕は朝の方が好きだった。
しばらくして部屋に戻ってきた彼女は腕を擦りながら僕にくっついてきた。冷たいよなんて嫌がりながらこの瞬間、彼女が戻ってきてくれたと安心していた。
言葉にできない不安にかられる時がある。夜が彼女のことを、包み込んでもう返してくれないのではないかと思う。だから夜は苦手だ。夜は夜、そう言い聞かせていつも眠りにつく。
「祥彰もう眠そう。」
「うん、とっても眠たい。Aは？」
「んー、もう少し。」
「そっか。あのさ〜。僕さ、本当にAが好きだなって思うよ。おやすみ。｣
「...私もだよ。おやすみ。」
彼女よりも早く眠り彼女よりも早く起きる。
僕はAM0:00を超えたことがない。子供だろうか。
朝起きて彼女の寝顔を見てああ愛しいな、と思わず笑みが出る。太陽の光が彼女の顔を照らす。しっかり認識できる朝の方がやはり好きだな。
「祥彰、おはよ。」
「ん、Aおはよう、今日とってもいい天気だよ」
「こんなに晴天だと嫌になるね〜。」
そうかな、なんて思いながらも僕は彼女の言葉を受け止めたつもりでいる。少しひねくれた彼女も太陽の下にいればいつか変わってくれるんだと思っていたんだよ。
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作者名：早瀬 x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月29日 15時
