◇ ページ46
本当に来たくなかった。どうしたら来なくて済むか真剣に1分考えた。熱が出たとか体調不良なんてこのご時世悪い嘘すぎるし、かと言って自分の身内に不幸が起きたことにはできないし、電車が止まったなんて3秒でバレるし、ため息をついて、せめてもの抵抗でいつもより一本遅い電車に乗った。
オフィスの入るビルを見上げてもう一度ため息をつく。Aだけじゃなくて会う人全員にどんな顔をすればいいのかわからなかった。いつまでもここで突っ立っているわけにも行かず、重い足で歩く。歩いていればそりゃいつかは着くわけで、見慣れた扉を前にまたため息をついてそれを開けた。
「おはようございまぁす」
自分でも思う。週の頭にふさわしくない気怠げな挨拶である。それでもまばらに挨拶が返ってきて、奥で話していた河村さんと伊沢さんがこちらをみた。Aは乾と普通に喋っていた。…あの2人も同期だもんな、仲良いもんな。いつもの席に荷物を下ろすと隣にいた清水が少し心配そうにこちらをみた。んーごめん、今はだれにも何も言えない。そう思ったはずなのに。
「こうちゃんおはよう、ちょっといい？」
できれば今日なるべく関わりたくないなと思っていたその人、河村さん。真っ直ぐにこちらを見つめてそう言われてしまえば逃げることなんてできずに小さく頷くと、いつかAと河村さんが入っていった会議室を指さした。
まあ座って、とひと席あけて2人で並んで腰掛ける。ここで河村さんから呼ばれるなんて、Aの話だろうってなんとなく察しがついた。
「んー、何から話そうか。…今朝、森川から2人のことを聞いたのね」
「…はい」
Aが泣きついたのだろうか。え、もしかしてこれから俺説教される？と変に焦った時。
「申し訳ない、僕が悪いところが多々あって」
「…は？」
「多分ね、こうちゃんにものすごい勘違いをさせてしまっている気がする」
顎に手を当てて少し考え込んだ河村さんは、最近Aとよく話していたその理由から話し始めた。あぁ、確かに少し前にうちにやってきた河村さんと同い年の女性は、なんかAと馬が合うようですぐに仲良くなっていた。
「平たく言うと、今まで森川と2人で話したのも、土曜日僕が呼んだのも、彼女とこれからどうしたらいいかをひたすら相談していたわけで」
気を遣ったが故にこうちゃんにもなんの話をしているかすぐに答えられなかったんだと思う、と河村さんは続けて、申し訳ないと頭を下げた。
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黄色い恐竜(プロフ) - 絢瀬さん» コメントありがとうございます！読んでいただけたのも嬉しいです……！ぼちぼちまた2人で書きますのでよろしくお願いします！ (2020年12月21日 15時) (
レス) id: 110633540f (このIDを非表示/違反報告)
絢瀬 - 本日一気見しました！更新お待ちしています (2020年12月17日 22時) (レス) id: 38bfafd10d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早瀬と恐竜 x他1人 | 作成日時：2020年11月11日 14時
