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財布、スマホ、それからあんまり冷え込まないとは言われてるけど一応マフラー。俺が使わなくたってAがまた寒がるかもしれないし。今日はAどんな格好してくるかなぁ。家出るよー、とメッセージを送って靴を履く。今日はAが見つけてくれたお店の最寄り駅で待ち合わせ。多分俺もAも30分くらいで着くし、何もなければAだってそろそろ家を出るんじゃないかな。
家を出て鍵を閉めた時、スマホが鳴った。メッセージじゃなくて電話。Aだ。なんだろ、電車乗り遅れたかな、なんか忘れものでもした？珍しいな、そんなことなんてなかなかないのに。とか思いながら応答ボタンを押す。
「もしもし？どしたの」
「あ、ごめんこうちゃん、もう家出ちゃった？」
「今出たとこ。なんか忘れものでもした？」
「んーん、あのね、すっごい申し訳ないんだけど、その…今日、行けなくなっちゃった」
「…どうしたの、体調崩した？」
思わず足が止まる。昨日急に決めたとは言え誘ってきたのはAだし、Aも楽しみにしていたはずで、それを当日の朝、しかもぎりぎりにそんなこと言うなんて。体調を崩したのならそれはそれで心配だし、もしそうじゃないなら、…久しぶりの俺とのデートより優先するのは、なに。
「あ、いや、そうじゃないんだけど。ちょっと急用で」
「…急用？」
少しだけ、自分でも声のトーンが下がるのがわかった。ねえ、だってしょうがないでしょ。俺だって会いたくて楽しみにしていたのに。
「その…河村さんにちょっと、呼ばれて。話聞いてほしいって」
「どういうこと。俺より河村さんなの」
「違う、そんなことないよ。でもね、ずっと話聞いてて、大事なタイミングなの」
「それはなんの話なの？」
「それは…」
「言えないんだ。俺には言えない話ずっとしてて、俺との約束ドタキャンして河村さんのとこ行くんだ」
「河村さんとはなんもないよ」
「でも今日来ないんでしょ」
「それはごめんね。本当にごめん。ちゃんと埋め合わせするから」
「もういいよ」
電話の向こうでAが息をのむのがわかった。やっぱり今日俺のところ行くって言うなら、今ならしょうがないなって言えるのに。
「ごめんね、今日の夜家行ってもいいかな、時間分かったらいうから」
あぁ、やっぱり今日の俺は河村さんには勝てないんだ。河村さんの次なんだ。
「もういいよ、楽しんでくれば」
もう声も聞きたくなくてそのまま電話を切った。あーあ、昨日から俺あんなに楽しみにしてたのに。
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黄色い恐竜(プロフ) - 絢瀬さん» コメントありがとうございます！読んでいただけたのも嬉しいです……！ぼちぼちまた2人で書きますのでよろしくお願いします！ (2020年12月21日 15時) (
レス) id: 110633540f (このIDを非表示/違反報告)
絢瀬 - 本日一気見しました！更新お待ちしています (2020年12月17日 22時) (レス) id: 38bfafd10d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早瀬と恐竜 x他1人 | 作成日時：2020年11月11日 14時
