Wednesday ページ24
会社の中で片思いなんてするもんじゃない。そうわかってはいたものの、好きになってしまったものはしょうがなかった。そのせいで、週の真ん中の水曜日、好きな人が女の人と親し気に話しているのをすぐ近くで聞かなきゃいけない。
私の好きな人は、自分の周りの人達の人間関係には聡いのに、自分に向けられる好意にはまるで気づかない人だった。わたしが分かりづらいだけなのかな、そりゃ、うちのCEOが大好きなあの先輩ほど分かりやすくはないけど。それでも、出勤したらちゃんと挨拶するし、エレベーターとかで一緒になったらそれなりに話す。よくある小説とか漫画みたいに可愛いことは言えないけど、…言えないから、ただの後輩なのかな。
｢山本｣
｢うん？｣
｢人のこと誘っておいて予定忘れるやつってどう思う｣
｢え？なに？なんか怒ってる？｣
何やらご機嫌斜めの檜山さんは、最近は特に何かにつけて山本さんを捕まえて、件の彼の愚痴を零していた。同期で仲いいってそれだけで無条件に彼と話して飲みに行ったりできるなんて羨ましい。私なんて話しかけるだけでいちいち理由を探しているって言うのに。
「清水、大丈夫？」
「え？」
「…なんか、泣きそう」
「…なんでもない、ちょっと、先に帰ろうかな」
きっと誰にも知られていない私の気持ちを、今日もバレないように、至って真剣に目の前の画面を見つめる。それでもよっぽど酷い顔をしていたようで、撮影を終えたこうちゃんに心配されてしまった。彼の気遣いに甘えて、定時の少し前に席を立ってお手洗いに向かう。…うん、ちょっと目が潤んでるだけ。少しすれば落ち着くはず。化粧も落ちてない。
上がり時間丁度に出れば、最寄り駅の抹茶カフェに行けるかな。なんでもない水曜日だけど、今日はちょっと、自分を甘やかしてあげないと、明日も山本さんと顔を合わせるんだもの。笑顔でおはようございますって言えるように、今日はいいよね。大好きなあんみつ食べよう。
「清水ちゃん調子悪いの？大丈夫？」
「すみません、ちょっと、頭痛くて」
「熱は？平気？」
「大丈夫です、今日はこれで失礼します」
自席に戻ると檜山さんに心配されてしまった。こうちゃんと話してたのなんてほんの一瞬なのに。あぁ、こういうところがモテるんだろうな。まさかあなたに嫉妬してましたなんて言える訳もなくて、咄嗟に嘘をつくと、檜山さんはますます心配そうに私の顔を覗き込む。ごめんなさい、でもいまは檜山さんに優しくされたくない。
頭を下げてオフィスを出た時、一瞬だけ山本さんと目が合った、気がした。
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黄色い恐竜(プロフ) - 絢瀬さん» コメントありがとうございます！読んでいただけたのも嬉しいです……！ぼちぼちまた2人で書きますのでよろしくお願いします！ (2020年12月21日 15時) (
レス) id: 110633540f (このIDを非表示/違反報告)
絢瀬 - 本日一気見しました！更新お待ちしています (2020年12月17日 22時) (レス) id: 38bfafd10d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早瀬と恐竜 x他1人 | 作成日時：2020年11月11日 14時
