◇ ページ20
目の前の彼女は、一昨日むくれていたのはどこへやら、楽しそうにポテトをつまみグラスを傾けていた。
ねえ、そんなワンピースいつも着ないじゃん。ネイル、昨日までしてなかったでしょ。ねえ、それは俺のためと受け取っていいの？変に勘違いするのが1番痛いのは分かってるけど、でもお前がそんなにわかりやすいんだもん。ほら、手を取ったって何も言わないじゃん。
時間が過ぎる早さに驚く程には楽しんでいた。店員が置いた最後の1杯を惜しむように飲み進める。酔っ払った檜山は、やはり楽しそうだった。これ、俺の一回目のデート、大成功なんじゃないの。
日付が変わるまであと30分と言ったところ。じゃあね、とここでこのまま解散するつもりもないけど、家まで送るのは流石にあれか、と若干悩んで、最寄りまで送ると声をかけると檜山は少し戸惑ってるように見えた。…俺がそんなことしないと思ってた？ちゃんと送らせて、女として見てんの。店員に声をかけて会計を済ます。マフラーを巻き店の外へ出るとその寒さに思わず身震いした。
｢外さみいな。檜山、お前それで寒くねえ？｣
柔らかな生地のワンピースの下は薄い黒だけを纏った脚で、女性はつくづくすげえよな、なんて感想を抱きつつ、手をコートのポケットに突っ込んで歩き出す。
｢寒いです、あったかいとこ行きたい｣
なあ檜山、といつもみたいに名前を呼ぼうとしたところで彼女のか細い声が耳に届いた。振り返ると店の前に立ったまま、寒そうな格好のまま。あったかいとこって、何言ってんのお前。
｢…連れて帰ってよ、いざーさん｣
まるでおもちゃを買ってもらうまで帰らないと駄々をこねる子供のような、ちょっと詰まったその声とともに、彼女が求めているものが押し付けられた気がした。
「…なんで泣いてんの」
「いざーさんが、かえろーとするからじゃん」
檜山の目の前にたった時、俺を睨みつけるように見上げるこいつの目は赤くて潤んでいて、ぎゅっと唇を噛んでいた。
「どんだけ待ったと思ってんの」
あぁもう、知らねぇよ。俺だってもっとかっこつけたかったのに。一回目のデートで手繋ぐとか家連れてくとか軽く思われそうで絶対しねぇと思ったのに。
「…帰んぞ」
俺だって好きで待たせてたんじゃないの。俺なりに考えてたの。それなのに、後で文句言っても知らねえからな。絡めた指に力を込めると、冷たい指先で同じように握り返された。
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黄色い恐竜(プロフ) - 絢瀬さん» コメントありがとうございます！読んでいただけたのも嬉しいです……！ぼちぼちまた2人で書きますのでよろしくお願いします！ (2020年12月21日 15時) (
レス) id: 110633540f (このIDを非表示/違反報告)
絢瀬 - 本日一気見しました！更新お待ちしています (2020年12月17日 22時) (レス) id: 38bfafd10d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早瀬と恐竜 x他1人 | 作成日時：2020年11月11日 14時
