【QK】”好きです”についての考察【コラボ企画】

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「いつまでこっちいるの？」

拳の家で、拳のお母さんお手製の美味しい鍋をつつきながら、幸せが続く期間を問う。

「1週間くらいの予定」
「えー、短い。もっといてほしい」

こうやって言葉にすこしずつ好意を滲ませたって、気付かれない。気付かれないようにいままでの関係を構築してきたつもりだ。

「そう？あ、でも今回は毎日会えるよ」
「え、いっつも予定パンパンに詰めてるのに？」

わたしは拳の帰省を楽しみに日々を過ごしているけれど、実際帰ってきても彼には細々した予定がたくさんあって、何日かちらっとどちらかの家で会えるってくらいなのだ。

それだけで1年の原動力にできちゃうんだから、つくづくコスパの良い女だ。

「あはは、今回は予定ゼロなんだ。Aにしか帰省のこと言わないつもりだし」

野菜をわたしのお椀に避けながらなんてことなさそうにへらりと笑う彼。小さな頃からこの役割はいつもわたしが請け負っていた。だからわたしも、その野菜をひょいと口に入れる。

……う、浮かれるな。わたしにだけなんて言葉に今更惑わされるな。

「なんで？」

つい声が上擦った。この中途半端な時期で集まりが悪いからとか、それこそこんなご時世だからとか、もっともらしい理由はいくらでも浮かぶ。

「え、うーん、Aに会えれば十分だから？」

それなのに、被せられた言葉があまりにも意外ですこし噎せた。


「Aに会うために帰って来てるみたいなとこはあるよね、実際」


心臓がドキリと鳴って、ズキンと痛む。

こんなに思わせぶりな態度を取っておいて、散々期待させるような言葉をかけておいて、どうせこの後さっきの自身とわたしをすこし茶化してなかったことにするんだ。

「待って俺めっちゃ恥ずかしいこと言ってない？」

……ほらね。こうしてまたただの幼馴染みとして、隣に並ぶつもりなんだろう。

もしかしたらわたしの恋心なんてとっくに知れていて、その上でおちょくられているのかもしれない。でもこの際、そんなの些細なことに過ぎなくって。

わたしの気持ちに気付いていても気付いていなくても、どちらにせよ彼は残酷な初恋泥棒だ。

「あ、ちょっと照れてる？」

ほら、ほらね。このまま、戻るんだ。

こんなことの繰り返しで20年以上過ごしている片想いのスペシャリストの実力はこんなところ。

「んあ、春菊口に入った、にっがい」

……初恋泥棒なんかじゃあ足りないな、わたしの真ん中にドンと居座る彼は……そう、人生泥棒の名が相応しい。

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