【QK】”好きです”についての考察【コラボ企画】

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そんな男やめといて、俺にしとけば、なんて言うのは少女漫画の世界だけだろうか。そうやって君を簡単にかっさらうことが出来たらどんなに楽かという気持ちを白米と一緒に飲み込む。彼女と一緒に仕事をして数年が経ち、その間絶えず恋人はいたようだがその口から幸せな惚気話を聞いた覚えはほとんどない。彼氏がだるい、彼氏がやばいのどっちか。もしくは己の男運のなさを嘆いているか。

「なんでそんな毎度やばいのを捕まえるの」

「やばいやつほど擬態がうまいんですよ。最初はみんないい男に見えるんです」

まるで自分は悪くないとでもいうような言い草である。その擬態を見抜く眼を養いなさいよって話でしょう。すっかりヤバい男ハンターであることが定着してしまったおかげで、俺は今日も適当に話を聞いて説教をして、チキン南蛮を食べることしかできなくなった。彼女に想いを寄せる＝ヤバいやつなのだ、俺までヤバいやつ扱いされかねない。

「俺はナイスガイなんだけどなぁ」

「何言ってんですか、それは自明じゃないですか」

だったらやっぱり、俺が君の彼氏になったらいいんじゃないのと思うわけ。彼女はいつの間にか麺は啜り終えたようで、今度は白いおにぎりを投入している。旨いよなそれ。俺もチキン南蛮の最後の一切れにタルタルソースを全部つけて口に放り込んだ。

「なんでそんなヤバいやつとっかえひっかえできんの？」

「言い方もう少しないんですか、したくてしてるわけじゃないですよ」

綺麗な見た目だし、そりゃいつだって男は寄ってくるだろうけど、どうして彼女はこうも引きが悪いんだろうか。

「例えば彼氏と外で飲んでるじゃないですか」

「それ実話？」

「例え話ってことにしてください。で、ヤバい彼氏だから途中でキレたり、店に置いていかれたりすることもありますね」

「やべえなほんとに」

「で、取り残されて一人で茫然としてる私に別の男が声をかけるわけですよ」

「あなたちょろそうだもんね」

「私だって仮にも彼氏に置いていかれたわけだからそれなりに悲しいわけ。そんな時にさ、“あれ彼氏？あんなのやめときなよ、俺にしない？”とか言われたらする〜！ってなるじゃないですか」

ご飯をかきこむ彼女の隣で俺は頭を抱えた。理由は二つ。まず彼女は男運が悪いわけじゃない。引きが悪いというか、彼女の扉が常に全開なんだもの。そりゃヤバい男ばかり引き受けるようにもなる。そして二つ目。俺の思考が彼女の過去のヤバい男と同じだった。

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