【wrwrd!】私とあなたのメルヒェン【短編集】 (ページ1)

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始まりのかぐや姫〈gr〉ページ1

gr「A！こっちに！！」

『ええ...！』

「いたぞ！こっちだ！！」

gr「クソ、もう追ってきたか...！」

階段を兵士たちが上っていく音が聞こえる。私は彼に手を引かれて追っ手から逃げている最中だ。

ここは月という惑星。私はこの惑星を統べている王の娘...なのだが、今では謀反を起こしたとして追われる身となっている。

ことの発端は私のお父様の妻であり、私の実のお母様であるお方が亡くなってしまったことだ。お母様が最後に飲んだ湯飲みに毒が塗られていたようで、事件性があるとのこと。だがまだ犯人は見つかっていない。
...容疑者として私があげられているが。

そうなったのには少なからずあの人が絡んでいると思う。

「この人が新しい母親と妹だよ」

お父様が説明している横で微笑む女性と私よりも一歳年下だという少女。後でお父様の愛人だと聞かされたときは頭が割れてしまうかと思った。

私がいる限り、王女の座はあの人の娘のものになることはない。私がいなくなった方が都合がいいのだ。

gr「...A...A！」

『！』

考えに耽っていて反応が遅れてしまった。彼はグルッペン様。軍の最高指令官補佐で私の婚約者だ。

『ごめんさい、考え事をしていて...』

gr「無理はするな。辛いときは辛いと俺に...」

『辛くなんてないです。私が頑張らなければならないのに悲しんでられませんから！』

弱いところを見せてはいけない。そうしたら彼を困らせてしまうから。

gr「A...」

頬を撫でられる。そうして始めて涙を私が流していることに気づいた。気づいたところでこの涙は止まらず、むしろ沢山溢れてきた。グルッペン様はそんな私を抱きしめ、軍服を私の涙で濡らす。

『私がお母様を殺すわけないじゃない...お父様はあの人に会っておかしくなってしまったんだわ...！』

ああ、こんなに辛いことなんてこの涙と一緒に何処かに消えてしまえばいいのに。

gr「...辛かったな」

彼は私が泣き続けている間、静かに話を聞いてくれた。

gr「落ち着いたか？」

『...ごめんなさい、取り乱して...』

gr「大丈夫だ。さあ、まだ走れるか？」

走れると言いたかったが、もう私の足に力は入らないらしい。立つのでやっとだった。

そんな姿を見かねたグルッペン様は私を抱えると、「すまない、揺れる」と言って走り出した。