劇団四季CATS ジェリクルキャッツと少女の物語2

第64話 理由 ページ25

落ち着け




落ち着け




落ち着け、俺の鼓動！




「ごめん！遅くなった〜！ってあれ、コリコは？」
「え、あ、コリコは今日用事あって来ない。それだけ伝えに来た。」
「そっか〜ならふたりでやろう！」




今までは土曜の秘密の稽古で俺もAの相手をしてやっていた。




しかし好きな女と一緒にやるというのはどうも…。




更に今日はコリコが用事でここにいない為、ふたりきりである。





一方Aは白線を引いて準備万端だ。



「よし！かかってこ…」
「あのさ、今日試合は…」
「何？まさかやらないって？」
「ああ、だってコリコがいないから…本来はお前とコリコが強くなる為にやってんだろ？」





本当はふたりきりが気まずいからだ。




別に嫌じゃないけど、どうも落ち着かなく、普段の俺じゃなくなってしまう。





Aは一気にしかめっ面になり、ずんずん歩いてこっちに来た。




「私のわがまま忘れたの！？私が前、これからも試合して下さいって言ったらおうよって言ってたじゃない！素っ気なく、えらそーに！」
「俺の真似すんな！てか忘れてねーし！」
「じゃあ試合して！」
「何でそんなに必死なんだよ！今日だけでも…」
「ギルさんは強くて相手になるから…」
「…えっ？」
「隙あり！」




するとAは俺のみぞおちに空手チョップをした。



「いてぇ！何すんだ！」
「貴方は何で試合嫌がってるのか知らないけどもういい。今日は帰る！」




そう言うとバックを持ってトンネルに向かいだす。





「ちょっと拗ねるなって！」
「拗ねてない。」
「いや明らかに拗ねてる！」




Aは無視して歩きつづける。




「ごめん！ごめん！悪気はねぇから！」



俺がそう言うとAはひとつ溜息をついて振り返った。



「今日どうしたの？なんかいつもと違う。誰かと喧嘩した？気分悪いとか？」
「えっ？別になんとも…」
「そう。ま、いつも素直じゃないツンツン感はあるからいいか。」
「は？何だそれ。」
「だってギルさんいつも素直じゃないもん。なんかタガーの一歩手前みたいな…」




え。





あのつっぱり野郎の一歩手前…？





俺が？





「…それは嫌だ。(真剣)」
「はは、なら素直に私と試合をすることだね。」
「まさか俺をからかってるのか？」
「へへ、だって試合してくれないから…」
「はあ…分かったよ。」








俺はなんだかんだで試合をし、見事勝った。









いくら好きでも、勝ちは譲らない。

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