劇団四季CATS ジェリクルキャッツと少女の物語2

第55話 突然 ページ14

空を見るとドーン、ドーンと大きな音を立てて花火が上がっていた。


「綺麗！」
「すげぇ…」
「大きいな〜！」


去年見てなかったからかな。

花火ってこんなに綺麗だったんだ…。



お父さんはこの花火大会でお母さんに告白し、その5年後に結婚した。

今、天国で2人も花火見てるのかな…。




そう思うと涙が滲んできた。




私もお父さんとお母さんと花火見たいよ…。






すると隣に座っていたコリコがぎゅっと私の手を握った。

コリコの手は私と同じくらいの大きさだけど、少しごつかった。

でもとてもあったかくて、安心感があって、私は握り返す。



「…ありがと」


私が小声で言うと、


「…どういたしまして。



今日のA、すごく綺麗だよ。」


と小声で返ってきた。





綺麗だなんて、全然そんなんじゃないけど、コリコは素直だから私も素直に受け入れよう。





花火が終わると、空が曇ってきたので、急いで帰ることにした。


駅に向かう途中、後ろから声がして振り返ると、同じクラスの阿部達也が息切れ状態でこっちへ来た。


「安藤来てたんだ…！よかった、ちょっといいかな？」
「えっ、でも私…」
「大丈夫。僕達待ってるから…」
「悪い船津。結構かかるから先帰ってて。」
「…ああ。」



こうしてミスト達は先に帰った。


残った私は阿部くんと川岸に座る。


「浴衣、可愛いな。」
「全然。でもありがと。どうしたの、急に？」
「いや、ちょっとさ…えと、あの…」


このまま沈黙が5分くらい続いた。


空はどんどん悪くなっていく。


「ねえ一体何？私そろそろ帰ら…」
「なあ、お前船津と付き合ってんの！？」
「えっ？付き合ってないけど…」
「そうか！なら良かった！すげぇ噂になってるから…」


突然そんなことを聞かれて驚いたけど、噂になってたのか…。


「あっ、安藤もう帰らないと行けないんだよな。」
「うん、またね。」
「おう、じゃあ！」



こうして阿部くんは走っていった。


一体なんなんだろう…なんでわざわざ2人きりにしたんだろう…。




するとゴロゴロ！と大きい音が鳴り、雨が降り出した。


まずい！



私は大急ぎで駅へ向かったが、どんどん雨は大粒になり、ずぶ濡れになってしまった。



あーあ、せっかくおしゃれしたのに…。



私は電車に乗り、家に近い駅に降りると更に雨はひどくなっていた。



走って帰ろう。そう決意した時、誰かに腕を掴まれ振り返る。









「今仕事終えたから、一緒に帰ろう。」

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