君は何を思う３ (ページ45)

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１４３話ページ45

私なんでこんなところにいるんだろう。

まだ試合は残っているのに。
天皇杯だってもうすぐ。2週間もしたら、チャンピオンシップの準決勝だってあるのに。

ずっとベッドの上にいると、いろいろ考えすぎてしまう。
ネガティブな思考から抜け出せない。

西倉さんの事も。

ショックはなかなか癒えるものじゃない。

今までの西倉さんとのやりとりを、出会いから遡って思い出してみる。

話によると、西倉さんは私が言った｢好きです｣という一言が、自分に対する好意と思い込んでしまったらしい。
でも西倉さんにそんな事を言った事はない。

｢アントラーズが好き｣という話はしたけれど。

彼の事をそんな風に思った事はこれっぽっちも無くて。
鹿嶋に来て、初めてアントラーズ以外の知り合いが出来たと思っていたのに……。

大伍の言う通り、私に隙があったってことなのかな。

じゃあどうすればよかったの？

｢わかんないし……｣

考えれば考えるほど答えは出てこなくて、考えることに疲れて大きく息を吐いた。

そこへコンコン、とドアをノックする音。

｢はあい｣

返事をすれば、そっと開いたドアから顔を覗かせたのは……

｢りっちゃん！皐月も！｣

皐月｢よっ。来ちゃった｣

｢わざわざありがとう、座って？｣

りっちゃんを膝の上に乗せて椅子に座った皐月は、じっと私の顔を見て黙ったまま。

｢皐月？｣

どうしたんだろう？と皐月に声を掛けると、皐月の目にはうっすらと涙が浮かぶ。

皐月｢もう！心配したよバカA！｣

そう言って私の手をギュッと握りしめた。

皐月｢おばさんからAが入院したって聞いた時は血の気が引いたんだから！｣

｢皐月……。ごめんね｣

皐月｢も～……居てもたってもいられなくて飛んできちゃったよ！｣

｢……ありがと。大丈夫だから｣

いつも強気な皐月の目から涙がこぼれ落ちるのを見て、申し訳ない反面、ここまで思ってくれる人がいる事がとても嬉しかった。
皐月に出会えて、本当に良かった。