君は何を思う３ (ページ30)

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１２８話ページ30

大｢おつかれ｣

｢あ、……お疲れー｣

練習が終わって片づけをしていると、大伍が私の隣に並んで歩く。

大｢菜緒子のことなんだけど｣

｢菜緒子さん？｣

大｢この間はキツイ言いかたしてごめん。一瞬とはいえ、Aコーチもかかわったヤツだし。Aコーチの性格からしたら、心配するのは当然かなって｣

大伍がいきなりそんな話をしてくるものだから、真剣な顔の大伍に対して、私はなんだかおかしくなってきちゃって。
思わず笑ってしまった。

大｢何？何か変なこと言った？｣

｢言ってない(笑)大伍はそこまで私の性格詳しかったっけ？って思って｣

大｢毎日一緒にトレーニングしてたらどんな人かなんて分かってくるよ｣

｢そ。あの時は…私も悪かったよ。大きな事故っていう大変な場面に遭遇した人に対して軽い気持ちでお見舞いに行くって言った私も、もうちょっと大伍や菜緒子さんの気持ち考えなきゃいけなかった｣

大｢じゃあお互い様って事で｣

｢そういう事にしとこう。…で、菜緒子さんがどうしたの？｣

大｢ああ、菜緒子の状態をAコーチにも伝えておくくらいしてもいいかなって｣

｢あー。で、菜緒子さんは大丈夫なの？｣

片づけをしながらそんな話をした。
菜緒子さんは全身打撲と右足首の骨折。頭も打ってるそうだけど、命に別状はないと聞いてほっとした。
ただ、運転していた恋人の男性は助からなかったらしく、それを聞いた菜緒子さんは酷くショックを受けていたそう。

大｢今とても辛いと思うけど、元気になってほしいなって思う｣

大伍のその一言に、一瞬、胸が痛んだ。
そうだよね、心配だよね。
過去のこととはいえ、愛し合った恋人が弱っている姿を見たら、そう思うよね。

胸が痛い。
キュッと掴まれたように苦しい。

なんでだろ？
大伍が、菜緒子さんのところにいっちゃうって思ったから？
私の知らない、菜緒子さんとの恋人時代の大伍が垣間見えたから？

大｢Aコーチ？｣

｢え？｣

大｢どうかした？すげー怖い顔してるけど｣

｢あ、いや……なんでもない｣

大｢あっそ。じゃあ菜緒子の件はこれでおしまい。俺ももうノータッチだから｣

｢そうなの？｣

大｢ん。両親が長崎から来たらしくて。当分の間は母親が看病して、様子を見て実家のある長崎に転院させるって。俺はあくまで事故に遭遇した側の人間だから、できるのはここまで｣

｢そっか……｣

私の心を見透かしてるのかって思う大伍の言葉に、ホッとしてる自分がいる。