１２５話 ページ27
翌日。
大伍はいつも通り、グラウンドに姿を見せた。
何も、なかったかのように。
でも、ちょっと眠そうにも見える。
昨日遅かったのかな？
｢おはよう。大変だったね、昨日｣
大｢あー……まあ。ごめん｣
｢なにが？｣
大｢俺が半ば無理やりヤスんちに誘ったのに｣
｢ああ。別に気にすることじゃないって｣
大｢俺も食いたかったなー、焼肉｣
大きな欠伸をして、目尻を拭う大伍。
｢昨日遅かったの？｣
大｢まあ、それなりに。あいつの上司っつう人が仕事上がりに来てくれて。そのあと自分の車とりに戻った｣
｢そっか……また、菜緒子さんの様子を見に行ったりするの？｣
聞こうか迷ったけど、聞いてしまった。
どうしても気になってしまって。
大｢んー、わかんない｣
｢私も……お見舞い行こうかな｣
そう言うと、大伍はちょっと驚いた様子で私を見た。
大｢なんで？｣
｢なんでって……心配だからに決まってんじゃん｣
大｢Aコーチが心配する必要ないよ｣
｢でも、｣
大｢いいって。Aコーチは関係ない事だから｣
語気を強めて放たれた言葉。
大伍の声のトーンも低くて、なんとなく拒絶されているのかなと思った。
｢……そう。大伍がそこまで言うならもういいよ｣
大｢……｣
｢元カノだもんね。元とはいえ、恋人だもんね。私が入る余地はないよ、うん｣
大｢あ、いや、｣
｢いいの！出しゃばった私が悪かった！ごめんね？さ、練習練習！｣
なんとなーく気まずい空気が流れてる気がして、大伍がなにか言いかけたのを遮ってグラウンドに出た。
なんだろう。
大伍の冷めた口調に、胸がズキンと痛んだ。
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作者名：彩女 | 作成日時：2017年12月23日 0時
