111話 ページ12
真夏の熱い中で行われた試合は、どうも結果に内容が伴っていない。
辛勝、という言葉がぴったりな、納得のいかない試合が続いた。
なにかみんなの中でもくすぶっているような雰囲気があって、なんだか危険な予感がした。
そしてついに。
≪金崎、采配に不服!≫
≪交代に不満あらわ≫
湘南戦でそれは起きた。
夢生が、交代させられたことに納得がいかなかったのが、石井さんの手を払いのけた。
何が起きたのかと思った。
熱くなる夢生を押さえるスタッフ。
終始不機嫌そうな夢生の表情。
ベンチメンバーも、驚いていた。
試合が終われば穏やかな夢生に戻っていたけれど。
他のメンバーもいつも通りで、たいして気にしていない様子だけど。
私だけが気にしすぎてるのかな?
夢生のあの場面はしっかりとカメラに抜かれていて、あっという間に日本中に知れ渡った。
ネットでも、ニュースでもその場面が流されて。
招集が決まっていた日本代表からも外された。
あの後、夢生と石井さんの間でちゃんと話し合いがされて解決したのに。
夢生だって「あそこでやることじゃなかった」って反省しているのに。
世間では、夢生が代表から外されたことと併せて何度もあの時の事を言われた。
問題児、なんて表現する酷いメディアも。
その挙句、
≪チーム状態が悪いのは女性コーチのせい≫
≪女をチームに呼んだから輪が乱れた≫
今度は私が標的になった。
誰かが言いだしたら、日本中、もしかしたら世界中の人が便乗して私を悪く言ってくる。
ショックだった。
そう思われないように、私なりに必死でやってきたのに。
ファンやサポーターには、全然伝わっていなかったんだね。
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作者名:彩女 | 作成日時:2017年12月23日 0時