56話 ページ7
ヤス「菜緒子ちゃん、いたよな」
大「……」
練習が終わって、各々好きなように動き始めた時。
ヤスが、隣でストレッチしていた大伍に話し掛けた。
桜もすっかり散ってしまって、青い空と白い雲という初夏の気配を感じさせる気持ちの良い天気も、大伍には全く目に入っていないみたい。
さっきからずっと難しい顔をしてる。
こんな顔する大伍、珍しいなー。
「菜緒子ちゃんって?」
初めて聞く女の子の名前に、その人が大伍のなんなのか、単純に知りたくて聞いてみた。
だけど大伍は無言のまま。ヤスは「あー……」とか言ってはっきりしない。
「あ、大伍の妹?確か妹いるって言ってたよね?」
みんなが可愛い!美人!って騒いでたから覚えてる。
私は見たこと無いけど、大伍と似てるって満男さんが前に言ってたっけ。
ヤス「違うよ。菜緒子ちゃんは、大伍の彼女!」
周りに聞こえないようにと、ヒソヒソ話で教えてくれたヤスの話は、私の予想してなかったもので。
だって。
大伍、彼女いないって言ってなかったっけ?
ついこの間の話だよね?
あ、それとも、いないって言った直後に彼女できたとか?
大「彼女じゃないって。元だよ、元」
こっちを見ることなくヤスの発言の訂正をする大伍は、何を考えているのか表情からは分からない。
ヤス「元って言ったって、大伍が一方的に別れ話してきたんだろ?3週間くらい前だっけ?菜緒子ちゃん、まだ大伍のこと好きなんじゃねえの?だからこうやって会いに来て、」
大「俺には関係ないよ」
「あっ、大伍……」
ヤスの話を遮るようにそう言い捨てて、大伍はロッカールームへ引き上げて行った。
「……珍しいね。大伍があんな機嫌悪そうなの」
ヤス「うーん……。あいつもいろいろ苦労してんだよ。本人はやっとゆっくりできるって言ってたけど……そうもいかないのかなあ〜」
そう言いながら、ヤスもロッカールームへ戻って行く。
過去に何かあったのかな?
その、菜緒子さん?とかいう元カノと。
「モテる男は大変だねぇ」
なんて独り言、大伍が聞いたら怒るかな?
とりあえず私は関係ない話だし、あまり首を突っ込まない方がいいよね。
よし。
今日は早くあがれるし、久しぶりに外食でもして帰ろうかな。
最近見つけた定食屋さんにしようかな、それともハンバーガーをテイクアウトして家で映画でも観ながら食べる?
この後の食事の計画を立てながら練習用の器材を片づけた。
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タカゆき - 再開楽しみにしています。ご自愛下さい (2018年3月29日 23時) (レス) id: c542140ed6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩女 | 作成日時:2017年7月31日 23時