95話 ページ46
「よし。終わったー」
長テーブルに広げていた資料やパソコンを片づけて鞄にしまう。
ギプスをしてると文字入力はやりづらいけど、今日は数字入力だけだったから指一本で楽ちん。
「さて、と……」
時計を見ると16時過ぎ。
思ったより早く終わったなー。
石井さんには「あまり無理はしないでくださいね」って言われたけど、別に体調悪いわけじゃないから返事に困った(笑)でもそれも石井さんの優しさだよなあ。
鞄からスマホを取りだして画面をタップして、聖真に電話を掛ける。
聖真はすぐに出て、仕事が終わったと伝えると待ち合わせ場所と時間を教えてくれた。
家帰って、シャワーして着替える時間は余裕であるな。
「帰るかー」
ミーティングルームで独り言をつぶやいて、荷物を持ってクラハを出た。
ちょうど外に出たところで同じ方向に帰るスタッフさんがいて、お願いして車に乗せてもらった。
これでさらに時間に余裕ができるな。洗濯くらいはできそう。
―――――――――
「できた、と」
お気に入りの服を着て、唇には皐月が「もっと女らしさを身につけたほうがいいよ」と余計なひと言と共にプレゼントしてくれたリップとグロスを控えめに付けた。
いつも一つに結んでいる髪はお団子にして、耳にはお兄ちゃんが去年の誕生日にくれたピアス。
お兄ちゃん、こういうセンスはいいんだよね。
ヒールの靴を履いたらカッコいいんだろうけど、身長を気にして自分では買った事がない。今年の必勝祈願で、久しぶりに履いたくらいだもん。
だから足元は、ぺたんこシューズで決まり。
「我ながら上出来」
って、何気合入れてんのよっ。
ただご飯食べに行くだけなのに。
でもなー。
普段が適当すぎるからな。皐月の言う通り、ちょっとは女らしくしたほうがいいよね。
うん。そうに決まってる。
「そろそろいい時間かな」
バッグを持って靴を履いて、玄関の鍵をかけて一階への階段を降りた。
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タカゆき - 再開楽しみにしています。ご自愛下さい (2018年3月29日 23時) (レス) id: c542140ed6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩女 | 作成日時:2017年7月31日 23時