君は何を思う２ (ページ34)

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８３話ページ34

｢私、高校3年の時に仲間を亡くしてるの。同じサッカー部で普段から仲が良かったんだ。見学席にその子のお父さんを見つけてね。……亡くなるまでにいろいろあったんだけど、その時に当時の出来事がフラッシュバックしたというか｣

大｢それで動けなくなったってこと？｣

｢まあ、うん｣

大伍の口調はいつも通りで、でも今はそれが安心するというか。
他愛のない話をするような感覚でするすると話せそうな気がしてきた。

大｢……動けなくなるくらい動揺したってことは、相当の何かがあったってこと？｣

｢向こうは私の事を恨んでたから｣

大｢恨む？なんで？｣

｢長くなるけどいい？家着いちゃうよ？｣

大｢それならAコーチが話し終わるまでドライブするからいいよ｣

未だに雷と雨という悪天候の中、自宅とは逆の方向に走り出す車。
今は大伍の厚意に甘えさせてもらおう。

｢私、中学の時から年代別に選ばれてたの。そしてその友人……瑠衣っていうんだけど、瑠衣も同じく年代別で選ばれる選手で。同じ高校に進学してからは、大親友って呼べるくらい仲良かったのの｣

高校に入ってからも年代別には2人一緒に代表入りしてた。
私はＦＷ。瑠衣はＤＦ。
瑠衣はセンターバックで、代表ではボランチもこなす器用な選手だった。

｢いつか2人でなでしこに入って、最強のチームを作りたいね……なんて夢を語り合ったりしたんだ｣

夏が終わるころにはお互いプロへの入団が決まって。

だけどその頃からだんだん瑠衣の態度が変わってきて、私にそっけなく接することが多くなってきた。
私は知らなかったんだけど、周りから聞いた話では、プロ入りが決まった事で雑誌やネットニュースに取り上げられるのはほとんど私で、瑠衣はおまけの扱い。それが気に入らなかったみたい。

｢そんな中で始まったＵ－１７Ｗ杯の代表合宿に、私と瑠衣も選ばれてね。……そこでアクシデントが起きたんだ｣

大｢アクシデント？｣

｢うん。瑠衣が亡くなって、私がサッカーを辞めるきっかけの発端となる出来事｣

そう。

全てはこれがきっかけだった。
ここから少しずつ、私や瑠衣、そしてそれぞれの家族の歯車が狂い始めたんだ。