48話 ページ49
「はあ……」
ミーティングルームを飛び出して、ちょっと離れた所で足を止めた。
落ち着け、と自分に言い聞かせるように、胸に手を当てて深呼吸をする。
いつかは聞かれるだろうとは思っていたけれど。
いざ聞かれると、まだこんなに動揺するなんて。私もまだまだメンタル弱いな。
何も後ろめたいことは無いのに、当時の記憶はできるものなら思い出したくはない。
思い出すと胸が苦しくなる。
でも、そうも言ってられないんだろうなあ。
大「Aコーチ」
突然声を掛けられて、ハッと我に返る。
後ろを振り向けば、大伍がそこに立っていた。
「どうしたの?」
できるだけ平静を保つようにして、笑顔で声を掛ける。
微妙な距離を空けて立っていた大伍が、ゆっくりと私の方に歩いてきた。
大「さっきのことなんだけど」
「……あー」
大「すいませんでした」
こちらがごめんね、と突然出て行ったことを謝ろうとしたら、先に大伍が謝ってきた。
「え、何で大伍が謝るの?」
大「だって、俺がサッカー辞めた理由聞いてからAコーチの様子おかしくなったから……」
「それでわざわざ?……こっちこそごめん。変な心配させちゃったね。何でもないから、皆の所に戻ろう?」
みんなもびっくりしちゃったよねー、とつぶやきながら大伍の横を通り過ぎると、「でも、」と大伍が言葉を続けた。
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作者名:彩女 | 作成日時:2016年3月28日 23時