君は何を思う (ページ5)

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｢あ、どうも。お久しぶりです｣

安西｢どうしたんです？池澤さんの姿を見つけたんでびっくりしました。あ、もしかしてこの間の返事ですか？｣

｢あっ、そうじゃないんです。一度、ちゃんとアントラーズというチームをこの目で見てから判断しようと思って……｣

個人的に会って話をした翌日、さっそくクラブの方に正式オファーが届いていた。
フロントからは驚きの声が聞こえて、ちょっと浮き足立っている人も。
｢トップリーグじゃない女子クラブのコーチに、鹿島みたいなビッグクラブから声がかかるなんてな。どこにチャンスが転がってるか分からないな｣と言われ、本当にそうだよな、なんて思った。

確かにビッグクラブでコーチをやるのは夢のような話だけど、何事も相性ってものがあるからね。
自分の目でしっかり確かめて決めないと、相手に失礼だし。

安西｢あ、そうだったんですね。いいお返事が聞けることを期待してます。すみません、急いでいるので失礼しますね｣

｢はい……お疲れ様です｣

そう言うと安西さんは忙しなくクラブハウスから出て行った。

｢さて……。帰りますか｣

回答期限まであと3週間。
ちょっと、第三者に相談してみようかな。

そう思って、瞬時に頭に浮かんだ相手に電話を掛けた。

……。

出ないかな？
りっちゃんのお世話で忙しいかな？

切ろうかな、と思っていると｢はいはーい！｣と元気な声が聞こえてきた。

｢もしもし？ごめん今忙しかった？｣

≪大丈夫だよー。颯介の宿題見てたから気づくの遅れただけ≫

｢そっか。颯ちゃん小学生になったんだもんね｣

電話の相手は、私の高校の同級生であり、同じ女子サッカー部で苦楽を共にした仲間の皐月。
今は結婚して同じ神奈川に居て、優しいダンナさまと小学一年生の息子の颯介君、2歳の娘の里菜ちゃんと幸せに暮らしている。
久しく恋人なんていない私とは、正反対の人生(笑)

≪毎日バタバタして大変だよー。で？久しぶりに電話をしてきたからには何かあったんでしょ？≫

｢うん……。ちょっと相談がね｣

≪明後日なら旦那に子供預けられるけど、Aはどう？≫

｢14時くらいなら大丈夫｣

≪じゃあ明後日の14時、前に行った駅前のカフェでいい？≫

｢うん。ありがとね、皐月｣

≪まだ何もしてないって(笑)そういうのは、相談事を聞いた後に言って欲しいね≫

｢そうだね(笑)じゃあ明後日｣

皐月と会う約束をして、鹿嶋から自宅のある神奈川へと向かった。