１２話 ページ13
大｢昔サッカーやってたんでしょ？ポジションは？｣
｢ＦＷ。チームではセンターフォワードやってたの｣
大｢へー。じゃあゴリゴリの点取り屋だったんだ？｣
話しながらグラウンドの中へ入って、ストレッチの体勢に入る。
開脚をしながら、現役だったころの話を少しだけ。
｢まあ……当時は。でももう12年も前の話だから｣
大｢12年!?え、今何歳？｣
何がそんなに驚きなのか、西君はキリッとした目を丸くしてこっちを見ている。
源｢ちょっと大伍くん、女の人に歳聞くなんて失礼やろ｣
｢あ、全然大丈夫。今30だよ｣
大｢あ、俺の二つ上？俺より年下だと思って普通にタメ口で話しちゃった(笑)｣
やべー、なんて言いながら苦笑いの西君。
アゴ髭を触りながらクシャッと目を細くして笑う顔は、28歳より幼く見える。
源｢さっきから失礼すぎるやろ(笑)すんません、池澤コーチ｣
｢ああ、全然いいの。昌子君も西君も、楽な話し方でいいから｣
源｢そういう池澤コーチも、俺らのこと呼び捨てでいいっすよ。俺らの方が年下やし。なあ、大伍くん｣
大｢だな｣
｢それは、たぶん練習が始まったら勝手に呼んでると思うから｣
源｢そうなん？｣
｢試合はもちろん、練習でも一旦スイッチが入るとみんな呼び捨てになっちゃうの。あ、でもさすがにここのキャプテンは呼び捨てにはできないかなあ(笑)｣
源｢満男さんはアカンやろ。偉大すぎるわ｣
そんな話をしながらストレッチをしていると、続々と残りの選手がやってきた。
みんな、私がいる事に一瞬驚いているけど、そう言えばそうだった……みたいにすぐに納得して｢おはようございます｣と挨拶をしてくれた。
聖｢おはようございます。Aコーチですよね。土居聖真です。これからよろしくお願いします｣
ペコリと可愛らしく頭を下げた彼は、後ろからやってきたチームメイトに｢新しいコーチ、もう来てるよ｣と手招きをして呼び寄せた。
岳｢おはようございます。柴崎岳です。よろしくお願いします｣
｢あ、よろしく｣
ペコリと軽く会釈をした柴崎君はちょっと気難しそうにも見えたけど、昌子君を見ると眩しいくらいの笑顔を見せた。
岳｢源、ネックウォーマー表裏反対じゃない？｣
源｢え？あっ！ほんまや！｣
めっちゃタグ見えてるし、と爆笑する柴崎君は、私に見せた顔とは全く違う、年相応の男の子の顔をしている。
2016年のチーム始動日は、緊張もありつつ和やかな雰囲気で始まった。
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作者名：彩女 | 作成日時：2016年3月28日 23時
