１１話 ページ12
緊張してきた。
既にグラウンドには練習着に着替えた選手も数人。
見学席にはこの日を待っていたであろうファンやサポーターの姿。
｢おはようございます。池澤コーチ｣
グラウンドの様子を窺っていると、背後から不意に声を掛けられる。
ビックリして、ドキドキする心臓を押さえながら後ろを振り向くと、そこには爽やかな笑顔の柳沢コーチ。
｢お、おはようございます。柳沢コーチ｣
柳｢こんな所で何してるの？｣
｢あ、いや……ちょっと外の様子を｣
柳｢池澤コーチも向こうに行くんだから、隠れなくてもいいのに｣
｢初日だから緊張してるんですよ。選手やサポーターの皆さんから受け入れてもらえるか不安ですし｣
柳｢大丈夫大丈夫。リラックスして、いつも通りでいいんだよ。さ、行こう｣
おいでおいで、と手招きされて、思わずそれに従って柳沢コーチの後について行った。
初めて足を踏み入れる、鹿島の練習グラウンド。
その瞬間、自然と身が引き締まる気がした。
もう、後には引けない。
やるしかない。
やってやる。
柳沢コーチに気づいた選手たちが挨拶をすると、後ろにいた私を見て一瞬緊張したように見えた。
柳｢この人が新しくコーチになった池澤Aコーチ。緊張してるみたいだから優しくしてあげてね｣
｢池澤です。今日からよろしく｣
源｢昌子源です。ほんまに女性コーチなんやなあ。まだ信じられんわ｣
大｢珍しいけど、面白いよね。男子のプロサッカークラブに女性コーチって。西大伍です。よろしく｣
お互いに軽く会釈をして初めましての挨拶をする。
そこへ、西選手があのさ、と話し掛けてきた。
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作者名：彩女 | 作成日時：2016年3月28日 23時
