4不思議な少年 ページ5
浦原視点
例の子を浦原商店へ連れてきた。
鉄裁サンに服やら何やらをお願いし例の子に渡そうと振り返ると、未だに玄関先で突っ立っていた。
「入っていいですよ」
遠慮しているのだろうと思い声をかける。
鉄裁サンに服を用意してもらったが、生憎私の着流ししか余っていない。
身長的にも私のものが合うだろう。
「少し大きいかもしれませんが、暫くはこれで我慢してください。大丈夫、新品ですから」
そう言って渡すと、例の子は少し眉を顰めて受け取った。
服を見つめたまま突っ立っていたので、鉄裁サンにお願いして例の子を和室に通してもらった。
着替えてくださいと一言告げ、私は一階でお茶を飲みながら降りて来るのを待った。
遅い。もう30分は経った。いい加減降りて来てもいい頃だ。
「少し様子を見に行きますか……」
少し心配になって二階へ上がり和室の前で声をかけるも返事がない。仕方がないので障子を開けて中の様子を確認した。
そこには、着流しを羽織って立ち鏡の前で首をかしげている子が居た。
どうやら着方がわからないらしい。
「あんまり遅いんで様子を見に来たんですけど……着方がわからないならそう言ってくださいよ」
襖近くの畳上に置かれていた腰紐を拾いながら、未だ鏡を見つめている子を見据える。
透き通るような白い素肌が日差しに照らされて余計に白く見える。
風でも吹いたら連れて行ってしまいそうだ。
「簡単ですから、よく見ててください」
少年をこちら側、立て鏡に対して横に向かせて、その正面に立つ。
真ん中の襦袢を強めに引き左右に引っ張って、後は腰紐を結んで完成。
しゃがむと視線が刺さっているような気がしたが、気のせいだろう。
そういえば例の子は少年らしい。
着付けをしていて分かったことだが、あまり筋肉のついていない、男性にしては華奢な体格。
年齢は黒崎サンと同じくらいだろう。落ち着いたら高校へ通ってもらうことになりそうだが、そこまでの学識があるのかどうか。
それに意思疎通が少々困難なこともある。問題は山積みだ。
着付けが終わり、鉄裁サンに後を任せてお茶を飲む。
ふと外を見ると黒猫が頻りに鳴いていた。
「人語じゃないと流石にわかりませんよ」
苦笑いしながらお茶を口に運ぶ。
お茶を飲み干した頃にはもう黒猫の姿は無かった。
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勝己 - とても面白かったです！更新待ってます (2020年2月29日 17時) (
レス) id: c1007a61f7 (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 紅弥さん» コメントしていただきありがとうございます。忙しく、更新ができない状況でした。明日、8話を更新いたします。もうしばらくお待ちください。 (2018年7月30日 0時) (レス) id: db9f040bb6 (このIDを非表示/違反報告)
紅弥(プロフ) - とても面白い作品で、読んでいて楽しいです。更新待ってます (2018年7月29日 1時) (レス) id: e562ecd9eb (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 柚子さん» 感想ありがとうございます。面白いと言っていただけて、嬉しい限りです。今後の更新をお待ちください。 (2017年9月4日 23時) (レス) id: b1791a5cf3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 恋雪さん» 感想、並びに応援ありがとうございます。大変励みになります。 (2017年9月4日 23時) (レス) id: b1791a5cf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にんじんしりしり | 作成日時：2017年6月15日 23時
