2迷い人 ページ3
浦原視点
今朝はなんとなく散歩に出た。
最近は気温が上がり蒸し暑い日々が続いている。
汗ばむ首元を扇子で仰ぎながら、近くの林の木陰で休んでいた。
カサ
奥の方から草木の揺れる音が聞こえた。
普段なら猫か何かだろうと気にしないが、今日は嫌に気になった。導かれるようにして林の奥へ歩みを進める。
かすかに人の気配がする。
今にも消えてしまいそうな、それでいて力強い。力強い、霊力。
嫌な予感とはよく当たるもので、また面倒ごとに巻き込まれてしまったようだと胸の内側にため息が宿った。
「誰か居るんすか？」
木陰のように静かに近づく。
目の前には湖と、その水面を見つめる人間。暫く様子を窺うが石像のように一寸も動かない。
「貴方、生きてます？」
死んでいるのかと疑うほどに白く透き通った肌に、喰われてしまいそうな黒い髪。
この世のものでは無いような酷く冷めた気配に息を飲んだ。
「……喋れないみたいですね。取り敢えず着いてきてください、立てます？」
その少年か少女か分からない人間は目線をこちらに向け、ゆっくりと立ち上がった。
どうやら生きているようだと一安心するが、足元がふらふらと覚束無い。
「声は聞こえてるみたいですねえ。喋らないから耳もダメかと」
冗談交じりに話しかけると、ふと目が合った。
私を見つめる黒い両の目はまるで私を捕らえんとする蛇のようで、少し恐ろしく感じた。
「さ、行きましょうか」
逃げるようにしてさっさと背を向ける。
はやる気持ちを抑えながら地面を踏みしめるようにしてゆっくりと歩く。
ちゃんと着いてきているか確認するために途中幾度か振り返ると、その度に黒い瞳は私を捉えて離さない。
長い間見ていると動けなくなりそうで、私はそれ以降振り返ることはなかった。
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勝己 - とても面白かったです！更新待ってます (2020年2月29日 17時) (
レス) id: c1007a61f7 (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 紅弥さん» コメントしていただきありがとうございます。忙しく、更新ができない状況でした。明日、8話を更新いたします。もうしばらくお待ちください。 (2018年7月30日 0時) (レス) id: db9f040bb6 (このIDを非表示/違反報告)
紅弥(プロフ) - とても面白い作品で、読んでいて楽しいです。更新待ってます (2018年7月29日 1時) (レス) id: e562ecd9eb (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 柚子さん» 感想ありがとうございます。面白いと言っていただけて、嬉しい限りです。今後の更新をお待ちください。 (2017年9月4日 23時) (レス) id: b1791a5cf3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじんしりしり(プロフ) - 恋雪さん» 感想、並びに応援ありがとうございます。大変励みになります。 (2017年9月4日 23時) (レス) id: b1791a5cf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にんじんしりしり | 作成日時：2017年6月15日 23時
