鳳凰と二度目の人生【ONE PIECE】 (ページ9)

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鳳凰と森の中（2）ページ9

辺りは暗くなっていき、もう照らしてくれるのは月明かりだけになった頃、ようやく見つけた甘い果実。あれさえ取れればもう帰れると思い駆け出そうとしたが、足を止めた。
まるで果物を守るかのように目の前で熊が寝ている。

熊を起こさずに果物を取るか、また数時間探しにでるか、急な二択を迫られた。私一人だけだったら前者を選んでいただろうが、ルフィもいるので後者を選ばずにはいられなかった。
行こうルフィ。と後ろに手を引っ張ろうとしたら彼は茂みを抜けて熊の所に走り出した。バカ！と言いたかったのだが、熊がいるので声は出せなかった。

ルフィは姿勢を低くし、音を出さずに恐る恐る果物に近づいて行っている。スリルを楽しんでいるのだ、彼は。
小さな溜息を吐いて頭を抱える。

慎重に行った結果、果物は取れた。が、ルフィが茂みに帰ってきた直後、彼は木の枝を踏んで大きな音を立ててしまった。冷や汗をかきながら足元から熊を見ると、目が合ってしまう。
心臓がドキリと跳ねる。熊が立ち上がり、ゆっくりと私達に近づいてくる。死ぬかもしれないこの状況で物事は考えられず、息だけが上がっていく。ルフィは震えながらも熊と私の間に立ち、両手を広げている。元はと言えば彼が招いた悲劇なのに、彼にしがみつくしかなかった。
ふと、自分の能力について思い出す。自身の傷を癒す能力。つまりは、今ここで怪我を負ったとしてもまた治るかもしれない。
考えたのなら実行しよう。
私はルフィを後ろに押し倒して、前に出た。熊との距離が近くなる。互いが目を合わし緊迫した状態が続くが、ルフィが「A！」と叫んだ事によってそれが崩れ、熊が勢いをつけて私の方に駆け出した。
スローモーションになる視界に目を瞑る。
大丈夫、一度奇跡は起こったのだから二度も起きる。

「シャンクス！！！」

涙を含んだルフィの声をオウムの様に繰り返した。

『シャン、クス？』

か細く言った声に反応する様に、怒気を含んだ声が返ってきた。

「これは一体、どういう状況だ？」

まるで抱きしめられているかの様に身体が温かい。いや、抱きしめられているのだ、守られているのだ、赤髪の彼に。
シャンクスと呼ばれた彼に。