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きっともう、蝶は飛んだ
フェリーのエントランスを小走りで駆け抜ける。だから、と言って油断はできない。何故なら探しているのは小さな猫と椅子なのだから。
すずめが右、私が左を凝視しながら行く姿に、休憩中の人達が首を傾げた。
……そして、勿論のこと猫と椅子についても広まっていた。そのお陰でめっちゃ気まずい。
見つけた階段を駆け上がり、小走り、……と繰り返す事数回。外に出た。
『こっち行ってみよう』
「うん。……どこ行ったのよ、まったく！」
すずめの怒り(を通り越して呆れ)が爆発しているのを横目に見ながら廊下を走った。
「『＿＿＿ああっ！』」
いた！、と二人して声に出した。突き当たりにあったデッキで一匹と一個が互いを睨み合っていたのだ。その距離、わずか二メートル弱。
じりじり、と椅子は距離を詰めていた。
「なぜ逃げる！？」
猫はゆらゆら。上手く距離を引き伸ばす。
「俺の体に何をした！？お前は誰だ！？」
一進一退の攻防が続く。でも、猫の背後には柵があって、その先は海が待ち構えている。
「答えろっ！」
椅子が踏ん張ってから猫に飛びかかった。が、猫はするりとそれを交わし、細長いレーダーマストの階段を駆け上がった。
私とすずめも椅子の隣に並んだ。そこから二、三歩前に出て手を広げる。
『危ないよ、降りといで』
ぴくり。猫の目が大きく開かれた。
「！…… ひらがな すーずめ」
「またねっ」
かと思いきや、その瞳をきらきら、と子供のように輝かせる。語尾を弾ませて、心底楽しそうに言葉を残すと、猫は海に飛び降りた。
汗がたらり、と顎を伝って垂れる。慌てて下を覗けば、後ろから凄まじい速さで来ていた小さな船に猫が着地していた。＿＿＿無事、だったことにふぅ、と一安心した。
「にゃあ」
大きな声で一鳴きすると、猫は速さを緩めない船で私たちを追い越して行った。
ほらね、だいじょうぶだよ。
そんな風な鳴き声だった。
当然、海の上を歩けない私達には、為す術も無かった。呆然と見送り、その場に座り込む。くるり、と顔だけ後ろに向ければ、埠頭からはもう随分と離れていて。
傾く夕日が影を長くつくっていて、なぜか悔しいけれど綺麗だった。
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すずや - るいさん» 見つけてくださりありがとうございます✨ (2月24日 22時) (
レス) @page24 id: 80d2653d1f (このIDを非表示/違反報告)
るい - 今日すずめの戸締まり見てきて、小説を見たくなったところでこの小説を見つけました!すごく面白いので頑張ってください! (2023年1月9日 16時) (レス) @page26 id: 2b427804a3 (このIDを非表示/違反報告)
すずな - まーぼーどーふさん» ありがとうございます✨ すずめの戸締まり本当に良いですよね〜 (2022年12月29日 21時) (レス) id: 80d2653d1f (このIDを非表示/違反報告)
すずな - キモオタクさん» これから少し落ちてしまうかも知れないので、今出来るだけ書いちゃってます！ (2022年12月29日 21時) (レス) id: 80d2653d1f (このIDを非表示/違反報告)
まーぼーどーふ - すずめの戸締まりの世界に入れて幸せ！神更新！ (2022年12月29日 21時) (レス) @page17 id: dd43b0d406 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すずな | 作成日時：2022年12月19日 1時
