How are you?Professor？｛wr.wr.d}{em}{短編集｝ (ページ7)

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それは最初から分かっていた事のはずなのに、まるで今初めて認識させられたかのように重たく私の思考の中へとその事実は入り込んできていた。
そして、今、私は彼を呼び出して、人間だという事を明かした。

『人間食べてみたいって言ってたでしょ？私、もうここで生きるの疲れたからどうせなら君の知識の一つになってやろうと思って明かしてみたんだ』
「…そう、ですか」

時間経過によりだんだんと薄れていく人間の匂いを隠す香水の匂いに対比するように彼は震えが大きくなるのが見て取れた。
きっと優しい彼の事だから言葉を探しつつ食欲に耐えているのだろう、悪魔としての本能のせいか彼の背から羽がミシミシと音を立てつつ広がるのも見えた。

「……大体は分かりました」
『食べる？』
「食べるわけないやろ……クラスメイトを」

ふーーーーっと自身に言い聞かせるように彼は呟き震えを止める。他の悪魔だったらきっとすでにパクっといかれていただろう、と思うと彼は本当に悪魔らしくない程に理性的な悪魔だった。

「Aさんが、俺に、何を望んでそんな事言ったか、ってのは分かりました。でも、嫌です」
『………そっか、こんな話してごめんね。呼び出してなんだけど私はもうすこし外見てるから帰りたかったら帰っても良いよ……さようなら』

また会おうなんて言えるはずもなく、さようならと別れの言葉を選び曖昧な笑みを浮かべてまた窓の外を見る。
このままじゃほんとに身投げするしかないんだろうなぁと目を閉じてぼんやりと考えた。
彼がここから出たら窓からそのまま落ちよう。教師に助けられたら落ちて羽を出す暇もなかったと言っておけばきっと信じてくれる。
しかし、いくら待っても彼が扉を開く音はせず、ちらりと彼の方を見ようとした時だった、ぐいっと腕を引かれ気づけば彼の腕の中にいた。
何が起きたのか理解できず上を向くと、羽のせいでやや影になっているが彼はどことなく辛そうな表情を浮かべつつも、涎が零れ落ちないようなんども唾を飲んでいる音が聞こえる。
言葉に詰まったように話しているのはきっとそのせいだろう。

『帰らないの？』
「今、帰ったら、駄目な気がして」
『……』
「あなたは、クラスメイトですが、それ以上に、俺の、友達なんや」

君がいなくなったら、どうしたらええん。
そう話す彼は種族なんて関係なくただの友人を思う学生に見えた。