標的1 ページ12
「…………」
私は今、困惑している。
なぜなら、自分が何者で、今何処にいるのか…
自身に関することが一つもわからないのだ。
さっきまで誰かと話しをしていた気もするが、周りに人の気配はない。
おそらくここは学校、だろう。
目の前には校門、後ろには校舎らしきものがあるからな。
しかし………
「記憶喪失…………か?現実で起きたらシャレにならないから……」
無意識の内にため息がでる。仕方無いことだ。
日が暮れかかっているが、家がどこなのかもわからない。
まさか家がない、なんてことはないだろうな……
何故こんな所にいるのかもわからない。自分はこの学校に通っているのだろうか。それにしては自分が制服ではないのが気になる。
もし自分がここの生徒なのであれば教師でも探して聞けばいいのだろうが、そうでなかったら私はただの侵入者、不審者である。
自分の名前も分からないのに、そのようなことをするのは無謀だ。
面倒なことは避けたい。
いや、もうこの状態が面倒なんだが………
しかし、何故私は記憶喪失になったのだろう。
きっかけがあるとは思うが……
「ん」
ふと足元を見ると、リュックと紙袋が落ちているのに気付く。
「………………よし」
少し……いや、かなり迷ったが、中を確認することにした。
「いや、だって私しかここにいないから私の物の可能性が1番高いし?もし私のじゃなかったとしても置いていくのがいけないし?」
罪悪感から、ぶつぶつと文句を言う。そんなことをしても、後ろめたさは変わらないが。
仕方無いだろう!?私は情報がほしいのだ!
まずリュックの中を見る。
財布、通帳、パスポート……
…………中見ちゃいけないやつばっかり…
「うううう………
で、でも、こんな所に置いていくのが不用心過ぎるし!?そもそも私のかもしれないし!?」
もう開き直る。自分の物であると信じて、パスポートを開いた。
「はぁ……」
気が抜けて、思わず大きな溜息を洩らす。
顔写真の所に、真顔の私がいた。ずっと渦巻いてた罪悪感から解放された。
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作者名：だいだい | 作成日時：2017年4月25日 0時
