destiny-IG7- (ページ10)

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あの本ページ10

「実は探している本があって」

まだ視線を本棚に向けてお客さんが行った。

私よりもずっと身長が大きい。

私は隣に立った。

『タイトルは･･･？』

そう言うと、お客さんが答えた。

お客さんは探していた本は私の大好きな本だった。

ある有名な作家の、デビュー作。

高校のころ、お父さんが韓国に一回戻った時に買ってきてくれた本。

本当におもしろくて何回も読んだっけ。

その本は今でも私の家で大切に保管されている。

けど、かなり古い本。

たくさんの本が置いてあるこのお店でも、さすがにあるかどうか･･･。

『その本、かなり前に出された本ですよね。デビュー作だからあまり出版数も多くはないかと･･･』

うーん･･･と本棚に目を向けると、お客さんの視線を感じた。

お客さんの方を見る。

ピタッと視線があった。

二重ではないけれど、キリッとした目だった。

『もしかして違う本･･･』

「いえ、その本です」

笑いながら答える。

「その本を知ってる人と会うことが珍しいのでつい」

そう言ってお客さんはクシャっと笑った。