目が覚めたら水の中でした 5【文豪ストレイドッグス】

199話 ページ2

太宰side



Aはちゃんと河から引き上げて、今は医務室に寝台に寝ている



取り敢えず一命は取り留めたが、何時目覚めるかは判らない状態らしい



与謝野女医の顔は今も険しい





寝台の近くの椅子に座り、固く瞳を閉ざしている彼女の手を握る


そんな寝ている彼女の顔色は顔面蒼白だなんてもんじゃない


血が正常に通っているか不安に思う位だ



Aの手は元々冷たいけれど、今は更に冷たく感じる



だから手を握って薄ら感じる脈拍に安心するのだ





此処まで安心するのは途轍もない恐怖を体験したからだろう







Aを引き上げて呼吸を行っているか如何か確認した





あの豪雨で荒れに荒れまくった河だ


多量の水を飲んで息が出来ないに決まっている




即座に心臓按摩(心臓マッサージ)をして、人工呼吸をした


この際に接吻だなんて考える余裕が何処にある





その工程を数分行っていたらAが噎せて、口から水を少し吐き出した


だけど目を開ける気配は無い




私は折れるのではないかという程Aを抱き締めて、彼女を摩って温めた



与謝野女医が来るまで何度も何度も摩って温めた








初めてだった



初めて誰かの死を怖いと、

恐ろしいと感じた



織田作の時とは違う





人を失くすという事に………


否、




Aを失うという事に恐怖を感じた



その為、Aが息を吹き返した時には心の底から安堵したのだ






「あれだけ人に云っておいて、居なくなろうとしただなんて……云った事と遣った事が逆転しているじゃないか」






もう……と云って軽く頭を突っついてやった



返事は返って来ないと判っていてもこういう状況では無性に沈黙を作りたくないと思い、話し掛ける






「皆心配しているよ。早急に目覚めて呉れ給え。早く謝りたいのだよ」






何程あの短時間でAを傷付けただろうか



肉体的にも、精神的にも




喧嘩をしたら必ず仲直りをするのだろう？


こんな気持ち悪い儘は厭だよ、私






「それに聞きたい事あるんだ。Aについて色々な事……」






乱歩さんは一部だけ判っているみたいだけどね



乱歩さんに一回聞いてみたら「自分で本人に聞け」と云われてしまった



まぁ当然だ









私はねA




織田作に良く似る君について知りたいんだ




君と笑い合いたいんだ




君とまた日常を過ごしたいんだ






「だから早く目覚めてよ、っ……」






私の嘆きはまだ届かない

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